深夜ドラマ『おじさんはカワイイものがお好き。』(読売テレビ・日本テレビ系、毎週木曜深夜)が話題だ。ドラマオタクを自認するエッセイストの小林久乃氏は、本作の登場人物たちに大いに共感するところがあるという。
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木曜の深夜、思わずニヤついてしまうドラマが放送されている。タイトルは『おじさんはカワイイものがお好き。(以下、おじカワ)』(読売テレビ・日本テレビ系、毎週木曜深夜)、主演は眞島秀和さん。この作品、ただコメディとして笑うだけではなく、色々と自分の生き方について真面目に考えさせられる部分も秘めている。そのいくつかを書いていこう。
自分の「好き」が表明できない男たち
小路三貴(おじ・みつたか/眞島秀和)は課長職に就く、見た目も振る舞いもモテオヤジ。ちなみに独身、バツイチ。彼は幼い頃からキャラクターの「パグ太郎」を推すオタクという一面がある。ただ体裁を気にして世間にそのことをひた隠しにしていたが、ついに熱い気持ちを共有できる推し友達・河合ケンタ(今井翼)が見つかった……? さらに周囲の男性たちもオタクかもしれない……。以上が『おじカワ』のあらすじだ。
コメディとしてツボにくるのは、小路が「パグ太郎」への愛に関してはガチであること。見つめているだけで癒されて、途方もない愛を感じながらも、気持ちだけではなく新グッズの発売日には恥を忍んでガチャガチャに並ぶ。今は、甥っ子の仁井真純(藤原大祐)が居候しているため、大量のグッズはクローゼットに封印中。でも生涯をかけて大事にコレクションしているグッズは、小路にとっては全て「パグ太郎」の表情が違う愛蔵品。
揺るぎない愛情をひた隠しにして、会社ではイケてるおじさんを装っているギャップもいい。ちなみに小路は部下の“推し活”には非常に甘く、アイドルでもコスメでもデスクに飾ることを容認している。きっと、「レアチケが取れたので、すみません、休ませてください!」と言ったら、快く送り出してくれる上司に間違いない。なぜなら、愛情を注ぐ相手は違えども、部下のマインドは痛いほど理解ができるから。
物語では小路に対して次第に、“推し友”が増えていくようになる。相手から勝手にライバル視をされている同僚は大の猫好き、外注先のデザイナーはキャラクターの「くまのがっこう」オタク。どうやら甥っ子も少女漫画家志望だ。
見渡すと、ここに共通しているのは“可愛い”という形容詞だ。男性の可愛いもの好きに対して、違和感と偏見があることはまだ否めない令和の世の中。自分の大切なものなのに、推す気持ちが世間にバレることを恐れて、気持ちを共有することを恐れてしまっている4人の男性たち──この状況、ドラマとしては面白いけれど、日常として捉えると寂しくなってしまう。