東京のJR神田駅の北側に「千代田区神田鍛冶町3丁目」という番地のエリアがある。ところが、隣接する番地は「鍛冶町」の1丁目と2丁目だけで、どこにも「神田鍛冶町」の1丁目と2丁目が存在しない。
このように不可思議なことが起きた原因は、1962年施行の住居表示法に基づく全国的な住居表示の変更だった。
全国の住所表示をわかりやすく改め、郵便配達や経済活動の利便性を高めることが変更の目的だったが、地域によっては慣れ親しんだ地名を失うことへの反発も多かった。そのため、住居表示の変更が実施されない地域も少なくなかった。
東京の「神田」といえば、江戸総鎮守として知られる神田明神が鎮座し、江戸っ子を象徴する場所。神田周辺の住民が「神田」の名を残したいと行政に訴え、その結果、古くから受け継がれてきた神田鍛冶町3丁目の番地だけが存続することになった。
※週刊ポスト2020年9月4日号