日本では、安倍晋三首相の体調・病状が注目を集めている。為政者の心身の健全さは国の基幹となる重大事であることは論をまたない。心身が不健康な者が軍の最高司令官であれば、取り返しのつかない事態を招きかねない。核兵器のボタンを握るアメリカ大統領となればなおさらだ。政治分析に定評があり、Real Clear Politicsなどで活躍するジャーナリストTed Noel氏が「政治家の健康」について問題提起する。
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2016年の大統領選挙の際、ラジオパーソナリティで作家のデニス・プラガーは私に、ヒラリー・クリントン候補の健康不安を論じることは妥当ではないと言ってきた。小児麻痺の後遺症と闘いながら大統領職を務めたフランクリン・ルーズベルトと同じだと考えていたようだ。彼は身体障害を負っていたが、大統領として必要な思考力を保っていた。
ヒラリー氏は、運動障害を起こすパーキンソン病を疑わせる徴候を示していた。ただし、ほとんどの人は、それによって手の震えがあったとしても、思考力に困難が伴うとは考えていなかった。少なくともアルツハイマー病のような記憶障害は起きないだろう、と。しかし、パーキンソン病も認知障害を伴うことがあり、無視できない深刻な問題をはらんでいた。そして、彼女が示した医療記録は、その疑問を払拭するには足りない内容だったのである。
ヒラリー候補が公の場にあまり姿を現さなかった本当の理由はわからないが、3日に1度の割合でカメラの前に登場しただけでは、疑惑は払拭できず、彼女が大統領職にふさわしくないという声を助長した。彼女が乗り物に乗り降りしたり、階段を上ったりする様子を撮影する機会がメディアに与えられなかったことも災いした。そういう単純な方法で健康不安を払拭することが、彼女にはできなかったのである。
「寝ぼけたジョー」(バイデン候補)もいま、同じ問題を抱えている。彼の場合、ヒラリー氏とは違って、記憶障害を疑わせるシーンが目立つ。演説では、独立宣言の有名な言葉を思い出すことができずに、「すべての人間は生まれながらにして……ほら……アレだよ」と詰まってしまった。自分が上院議員に立候補しているのか大統領選挙に立候補しているのかわかっていないと思わせる失言もあった。自分の妻と妹をごっちゃにしていた。そして、プロンプターに流れる原稿を読み上げるだけで言い淀んでしまう。質問をした人たちを侮辱した一言も物議をかもした。「お前は犬の顔をしたポニー・ソルジャーだ」――。