近頃ネット上で大きな問題となっているのは、SNSでの誹謗中傷だ。度を超えたネット上の暴言が事件化するケースも少なくない。
さらに、ネット上で話題になったこととして「ポテサラ論争」も記憶に新しい。「総菜コーナーでポテトサラダを買おうとした幼児連れの女性が、高齢男性から『母親ならポテトサラダくらい作ったらどうだ』と怒鳴られるのを目撃した」とのつぶやきがSNSに投稿され、論争に発展したのだ。こちらも、いわば高齢男性の“暴言”をきっかけに生まれた騒動である。
では、なぜ最近、暴言を吐く老人やインターネットで誹謗中傷をする人が増えたのか?
「それを考えるには、人間の脳の本質を知る必要がある」と話すのは、脳神経外科医で認知症専門医の『おくむらメモリークリニック』院長の奥村歩さんだ。
「人間の脳は、前頭葉が発達していて、社会性と言語を持っているのが特徴。人や社会とかかわったときに役に立ち、感謝されたときに最も幸せを感じる“報酬系”という設計になっています。
ところが社会的なつながりが少ないリタイア老人や、社会生活が円滑にできず満足感を得られていない若者など、人や社会との関係が希薄で、充実感が得られていない人は、あまり深い思考ができなくなっているため、思ったことをそのまま発してしまうなど、反射的な言葉を発しがち。その要因として、キレる老人には前頭葉の萎縮が、ITやスマホに頼る若者にはストレスや脳過労があるのです」(奥村さん・以下同)
また、前頭葉が老化や過労でフリーズすると両極端な“白黒型思考”になるため、ひとりよがりの正義感で攻撃的になりやすい。
「これまで当外来で3万人以上の患者を診療した結果、認知症になりやすいタイプとしては、怒りっぽくなった人が50%、頑固になった人が30%という比率でした。いずれも前頭葉の萎縮で起こる“性格の先鋭化”による代表的な性格の変化で、昔より怒りっぽくなった、頑固になったという人は要注意です。
ほかにも、以前は好きだった朝ドラや大河ドラマを急に見なくなったり、化粧やファッションに興味がなくなったり、もの忘れをしたときにとりつくろう発言をしたりするのも、脳の老化が始まっている兆候といえます」