新型コロナウイルスの影響で収入が減った中小企業や個人事業者などを支援する、「持続化給付金」。この持続化給付金に対して不正受給申請が多発、逮捕者も続出している。その裏には、SNSでの代行申請への勧誘や、不正申請の指南グループの暗躍があるという。SNSの最新事情と犯罪被害に詳しいITジャーナリストの高橋暁子さんが、持続化給付金不正受給申請に、なぜ大学生やフリーターが加わってしまいやすいのかについて解説する。
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緊急事態宣言がまだ解除されていなかったころ、20代の会社員AさんのもとにSNS経由で知らない業者から持続化給付金申請の誘いが届いた。「住んでいる地区の税務署へ行き電子申告の登録を行い、電話で電子申請の利用者識別番号と振込先口座を伝えてほしい。口座に持続化給付金100万円が振り込まれたら、80万円を手数料として振り込んでもらう。残りの20万円が報酬となる」と言われた。「時給の良い割の良いバイト。すぐに定員がいっぱいになるので最後のチャンス」と畳みかけられ、正直なところ心が揺らいだが、あまりにうますぎる話に、逆に怪しいと感じて断った。
同じ頃に大学生Bさんは、友人からLINEで「無職でももらえるから大丈夫」と持続化給付金の申請に誘われた。なぜもらえるのかと思ったけれど、バイトのシフトが激減して収入が減って生活が苦しかったし、「行政書士がやっているから合法で問題ない」と言われて、大丈夫なのかと思い始めた。だがLINEで身分証や口座番号などの書類を送ることを求められ、ふと心配になって同居の親に相談し、おかしいことに気づいた。
AさんやBさんは誘われただけで実際には申請をしなかったが、このようなケースは非常に多い。そして、資格がないのに申請をして給付金を振り込ませ、公金を詐取したとして逮捕される人が続出している。
7月末、山梨県警は埼玉県在住の19歳の大学生を詐欺の疑いで逮捕した。大学生は衣服の卸売業者を営んでいるという虚偽の確定申告をし、100万円を自分の口座に振り込ませていた。根拠となる大学生の事業は、昨年1年間で120万円の収入があったが、架空の経費により税額はゼロとしていたが、もちろん架空の話だ。逮捕されても未成年なので実名報道はされないが、持続化給付金にまつわる詐欺の逮捕で全国第一例目となってしまった。