30年くらい前までは、コンビニエンスストアのアルバイトというと、誰でもできる仕事という言われ方をした。しかしいま、コンビニは単なる買い物の場所ではなくなっている。各種料金を支払い、宅配便の荷物の受け取りと預かり、チケットの発券、レジでの支払時には各種ポイントカードの登録があり、支払い方法も多種類。これだけ複雑だと、「誰もができる」仕事だとは言いがたい。その多くを最近では、外国人留学生が担っている。俳人で著作家の日野百草氏が、今回は、「自信」という言葉が好きなコンビニバイトをするベトナム人留学生についてレポートする。
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「日本はいい国、もっと自信もっていいのに」
私は都心のコンビニで外国人の店員と仲良くなることが多い。というか取材になるかもしれないので必ず声を掛ける。地方ではまだ馴染みが少ないかもしれないが、都心では外国人のコンビニ店員は当たり前で、繁華街となると日本人の店員を探すほうが難しい。20代のベトナム人留学生グエン君(仮名)もそんな当たり前のコンビニ外国人店員の一人だ。日高屋が好きだというので連れて行った。大きくて漆黒の綺麗な眼をクリクリさせて「ラ・餃・チャセット」を前に大喜びである。
「お金持ち、みんな優しい、(街も)綺麗、楽しいこといっぱい」
グエン君はまだ日本に来て一年ちょっと、それほど流暢に話せるわけではないし、少しシャイな男の子だ。ちなみにベトナム人は名字が極端に少ないので、本当は名字で呼んだりしない。下の名前で呼ぶが、ここは仮名なのでグエン君にする。日本でいったら佐藤さんや鈴木さんというところか。ベトナムの英雄ホー・チ・ミンの愛称は「ホーおじさん」だが彼も一般人ならミンさんと呼ぶのが普通、ちなみにホー・チ・ミンの本名もグエンさんだ。
「だから自信もつ。日本いい国、来てよかった」
日本を褒めてくれるグエン君。ベトナムの留学生は寡黙だが率直で、自信にあふれている熱血漢が多い印象だ。内なる闘志と言うべきか。ベトナム語で「自信」(confidence)は「ス トゥ ティン」や「トゥ ティン」(グエン君談)。なんとなく昔の日本人のような懐かしさを感じる。戦争という悲劇に対してこんなことを言うと怒られてしまうかもしれないが、やはり国を守りきった誇りというのは子々孫々まで伝わるのだろう。それもあのアメリカ相手にである。そう、ベトナム戦争の勝利こそ、ベトナム人民の血をもって超大国アメリカを退けた誇りこそがベトナム人を支えている。ベトナムの歴史は中国、フランス、そしてアメリカといった大国との戦いの歴史でもある。
「日本すごいのに自信ない、よくないです」