最近、テレビのバラエティ番組を中心に、“あざと女”や“ぶりっ子”など、可愛らしさを過剰に表現するような女性の言動を、そうしたキャラとして楽しむ風潮が定着しつつある。ドラマオタクを自認するエッセイストの小林久乃氏は、そのトップランナーとして女優・松本まりか(35)の活躍に着目する。
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最近、女性の言う「嫌い」の価値観が読みづらい。ほんの少し前まで『嫌いなタレントランキング』の上位に食い込んでいたタレントや女優が、一気に女性からの支持を受ける現象が続いている。この新現象を生み出した先駆者といえば、田中みな実さんが即座に思い浮かぶ。でもこの夏は、女優・松本まりかさんの名前が欠かせないのだ。
溶かされそうなあの甘い声
現在、連ドラ2作品に出演中の松本さん。『竜の道 二つの顔の復讐者』(関西テレビ、フジテレビ系)では、富豪の令嬢・霧島まゆみ役としてヒール役に。今まで誰にも真剣に愛されることのなかった、歪んだ性格を演じている。
もう1作品は『妖怪シェアハウス』(テレビ朝日系)。四谷怪談に登場する、お岩さん=四谷伊和役として妖怪に扮している。人間でいるときは優しいナース。でもその裏では夫の不貞行為を許すことができず、呪い殺してしまったという過去を持つ。どちらも役に対するイメージを全く裏切らず、良い感じにまりか風味が滲み出ている。
松本さんが注目を浴びるようになったのは『ホリデイラブ』(テレビ朝日系、2018年)の井筒里奈役だ。W不倫の末に、相手の家庭を壊そうとする狂演が話題を呼んだ。夫との冷たい家庭から抜け出そうとターゲットにしたのは高森純平(塚本高史)。自分が高森姓を名乗ることを想像しながら、純平に近づいていく様子はホラー映画のようだった。