東京や大阪だけでなく、地方都市でも感染が拡大する新型コロナウイルス。各自治体はさまざまな形でコロナ対策を実施している。
福井県は新型コロナウイルスの感染者が出た事業所が、従業員のPCR検査や施設名・所在地の公表などに協力した場合、50万円の「クラスター防止協力金」を支給する。医療ガバナンス研究所理事長の上昌広さんはこう話す。
「これまで県内で職場クラスターが複数発生しており、その隠蔽こそが大きなリスクになると判断したのでしょう。しかし、無症状の感染者がたくさんいるところで公表しても、差別を生む可能性があるので慎重になるべきでしょう」
熊本県は飲食店などに感染防止対策アドバイザーを派遣。さらにアクリル仕切り板やサーキュレーターなどの導入費用として上限10万円を補助し、感染防止対策取り組み宣言を行った飲食店などにのぼりやタペストリーを配布。飲食店に対するこうした包括支援は、全国初の試みだという。
鹿児島県も非接触型体温計やフェイスシールドなどの購入費に対し、飲食店には上限10万円、宿泊施設には上限40万円を支払う。
飲食店を利用する客に働きかける自治体もある。国際医療福祉大学病院内科学予防医学センター教授の一石英一郎さんが説明する。
「宮崎県日南市では、飲食店の利用者が氏名、住所、電話番号、来店日時などを記した『グリーンカード』を店に提出するようにしています。感染者が出た際、素早い調査や把握をするためのもので、緑色で名刺大の用紙は市のウェブサイトからダウンロードできます」
いまだクラスターが発生しておらず、コロナ対策優良自治体の1つである鳥取県は、より徹底したクラスター対策を9月から行う予定だ。県内に「鳥取砂丘エリア」と「大山寺エリア」を設定し、2週間に1度、両地域の観光関連団体がエリア内の店舗のコロナ対策を点検することで、感染予防が継続されているか確認する。県や市も月に1度の点検を重ねるという。平井伸治知事は、「江戸時代の五人組ではないが、互いに連携することで安全を担保したい」と意気込む。
「地域にはその地域なりの性格、傾向、生活様式があり、それに合わせた対策は大きな効果が期待できます。先例に学んで国と連携をとりつつ、地域事情に応じた『ご当地対策』を講じることで、新型コロナ対策をアップデートしていくことが大切です」(一石さん)
いまこそ地方の力を発揮するときだ。
※女性セブン2020年9月10日号