昨年4月にアイヌ新法が成立したことをきっかけに、アイヌ文化復興の機運が高まっている。ところが、その中核的役割を担う団体「札幌アイヌ協会」で、思わぬ疑惑が持ち上がった。幹部による不透明なカネの流れを、複数の理事が実名で告発する異例の事態になっている。【取材・文/本田信一郎(ジャーナリスト)と本誌取材班】
委託先に「メノコモシモシ」の名が
7月12日、北海道白老町のポロト湖畔に「ウポポイ」という愛称の国立施設がオープンした。正式名称は「民族共生象徴空間」。アイヌ民族博物館、民族共生公園、慰霊施設の3つからなり、ホームページによれば〈アイヌ文化の復興・発展のための拠点〉と位置づけられている。
開業前日の記念式典には菅義偉官房長官や北海道の鈴木直道知事も出席。同日、菅官房長官が道内で講演し、「新型コロナは東京問題」と発言したことは記憶に新しい。
ウポポイは、政府のアイヌ政策推進会議座長を務める菅官房長官の“肝いり”といわれ、開業までに実に約200億円もの公費が投じられた。
昨年のアイヌ新法(*)成立を機にアイヌ文化復興を目指す動きが活発になっている。
【*正式名称は「アイヌの人々の誇りが尊重される社会を実現するための施策の推進に関する法律」。法律上初めてアイヌ民族を「先住民族」と明記し、アイヌ文化の振興・啓発に活用できる交付金制度が導入された】
ところが、そうした活動の中心となるアイヌ関連団体の内部で“公費の不透明な流れ”が問題視されていた──。