あの有名人に、実はこんな趣味があった……という話でよく引き合いに出されるジャンルのひとつに鉄道がある。最近では、鉄道ファンの意外な有名人といえば、将棋の藤井聡太王位・棋聖だろう。その藤井二冠が「乗りたかった」と惜しむ、今は使用されていない車両「189系」に乗ることが出来るようになったことについて、ライターの小川裕夫氏がレポートする。
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将棋界の新星・藤井聡太二冠の快進撃が止まらない。史上最年少でプロ棋士デビューを果たすと、7月には史上最年少で8大タイトルのひとつ、棋聖を獲得。続けて8月には、王位戦を制して最年少二冠を達成した。
初タイトルの棋聖を獲得後、日本テレビ系列のワイドショー番組「ZIP!」は桝太一アナウンサーが藤井新棋聖を訪ね、手土産として持参した鉄道模型をプレゼントした。桝アナが手渡した鉄道模型は189系と呼ばれる車両で、その顔には旧国鉄特急の雰囲気が漂う。そんな189系は、長野県を中心に2019年まで活躍した。
189系の模型を受け取った藤井新棋聖は、満面の笑みをつくった。その一方で、「乗りたかった…」と悔しそうな表情を見せる一幕もあった。
以前から藤井新棋聖が鉄道ファン、なかでも”乗り鉄”であることは将棋ファンの間では知られていた。同番組により、藤井新棋聖の鉄道好きな一面がお茶の間に広く知れわたることになった。同番組内で、藤井棋聖が乗りたいと熱望したのが東海道新幹線の最新型車両N700Sと、今では使われていない189系だった。189系は、急勾配で鉄道の難所と言われた信越本線横川-軽井沢間の碓氷峠に対応した1970年代製造の車両だったため長野運転所に集中的に配備され、在来線特急「あさま」に主に使用された。だが「あさま」は1997年に廃止されているので、2002年生まれの藤井二冠が「乗りたかった」のは、おそらく2019年3月まで走っていた、同じ189系車両使用の快速列車「おはようライナー」(長野県塩尻駅-長野駅)のことだろう。
N700Sは最高時速360キロメートルまで出すことが可能で、7月1日から営業運転を開始。今後も第一線で活躍する藤井新棋聖なので、タイトル戦の対局で地方にも頻繁に移動するだろう。移動の際にN700Sを利用することは間違いなく、乗車するのは時間の問題と言っていい。
一方、平日の朝に通勤客を運んでいた快速列車「おはようライナー」は昨年に運行を終了し、それとともに189系も現役から姿を消した。現在も平日朝の快速列車は走っているが、新型車両に置き換えられている。どんなに藤井新棋聖が乗りたいと願っても、走っていないのだから乗ることは叶わない。だが、その189系に「乗る」ことができる場所がある。