コロナ禍はマンション市場にも甚大な影響を与えている。首都圏を中心に起きていた不動産の局地バブル化は、今後コロナ不況が深刻になるにつれ崩壊すると予測されているが、すでに大阪をはじめ、地方都市や郊外マンションでは需要減に伴い価格が下落し始めているという。住宅ジャーナリストの榊淳司氏がレポートする。
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新築マンションの市場への供給量が激減している。2020年1~6月に首都圏で発売された分譲マンションは7497戸と、前年同期比で5939戸の減少(不動産経済研究所)。年間の供給戸数は「2万戸前後」という予測も出ている。仮にそうなれば2019年に比べて4割近い減少となる。
中古マンションの取引も低調である。東日本不動産流通機構の月例報告によると、首都圏の中古マンションの成約数は、新型コロナの緊急事態宣言が出された4月は前年同月比で50%超の減少。その後回復基調にはあるが、いまだ前年同月比でプラスに転じていない。
私はマンション市場をウォッチしてあれこれモノを言うことを仕事にしている。カバー範囲は首都圏と大阪、京都市内。カバーエリアで販売中の新築マンションを物件別に資産価値評価するレポートを発行している。
このレポートは3、4か月に1度の割合で最新情報に更新しているのだが、東京の都心や湾岸エリア以外では、著しい販売不振を感じる。この4か月でほんの数戸しか契約できていなさそうな数百戸規模の大規模マンションも珍しくない。
さらに、首都圏の郊外ではこれまで価格は上昇基調であったのが、ハッキリとした頭打ち感が見られる。大手デベロッパーが新規に販売する物件でも「エッ、そんな価格で出すの?」と言いたくなるほど、弱気な値付けも目立ってきた。
考えてみれば当然の話である。マンションの値上がりが始まったのは2013年のアベノミクス以降。2015年の異次元金融緩和第2弾以降は、その動きがバブル化した。しかし、一般人の購買力までもがバブル化したわけではない。
郊外や地方のマンションは、基本的に「住む」という需要があって購入される。購入するのは普通の給与所得者である場合がほとんどだ。個人所得はリーマンショック時に激減した後は回復基調にあるが、まだまだ低迷中。その間に消費税は2回上がり、公共料金や社会保険料の負担も増えた。可処分所得は当然減っている。
そんな状況で新築マンションの価格だけが値上がりしても、需要層はついていけないのだ。だから、地方や郊外では値上がりマンションの販売が低迷している。それが売り主側に伝わり、弱気な価格設定が出てきたのだ。