【著者に訊け】南杏子氏/『ブラックウェルに憧れて』/光文社/1500円+税
モンスター・ペイシェントや経営優先の病院方針に悩まされる女性医師が、患者との信頼について葛藤する『ディア・ペイシェント 絆のカルテ』が、現在、NHK「ドラマ10」で放映中。今年5月に出版した『いのちの停車場』は、故郷に戻り訪問診察医になった女性医師が、老老介護やセルフネグレクトなど深刻な状況を前に医療や人生の意味を考える作品で、早くも映画化が決定している。
次々と話題作を発表している南杏子氏は、終末期医療に携わる現役の医師でもある。最新刊『ブラックウェルに憧れて』では、東京の医科大学で長年教鞭を執ってきた女性教授と4人の教え子が、女性として日々直面する不条理に立ち向かう。女性医師たちが現実の厳しさにくじけそうになりながらも懸命に我が道を探り、希望を見出す感動作だ。
プロローグで、〈中央医科大学〉の女性教授・城之内泰子に、記者がつめ寄る場面が描かれる。複数の大学の医学部で長年、女子受験生や浪人生に対し不適切な減点が行われていた事件が発覚したのだ。現実においても、2018年に同様の不正入試問題が明るみに出て、社会に衝撃が走った。
「医師の男女比が不均衡なのは誰が見ても明らかですし、医学部の不正入試は、大学や病院にいる者なら『そんなことだろうと思った』と感じる出来事でした」
ようやく明かされた不正問題だが、南氏は、この騒動を糾弾するつもりで書いたわけではないという。