ケータイやスマホでも気軽に写真撮影ができるようになり、写真を楽しむ高齢者も増えている。さらにシニアのインスタグラマーが注目されるなど、写真を撮る楽しみ方もまた、豊かに広がってきた。魅力的な被写体を探そうと思って歩けば、見慣れた散歩道も素敵な世界に見えてくる。また、夢中で撮影していると脳が活性化することもわかっているという。コロナ禍で疲れた心身もリフレッシュできそうだ。そんな写真撮影の魅力をフォトエディターの板見浩史さんに聞いた。
「写真を撮ろうとするときは、自ら感動を求めるのです」と言う板見さん。プロ・アマチュアを問わず数多くの写真家と交流し、板見さん自身も撮影を楽しんでいるという。
「これだ!という被写体を見つけた喜び。そしてファインダーを覗きながら、どんな構図の写真にしたらこの感動を後で追体験できるか、あれこれ考えるワクワク感。シャッターを押すのも単純ではなく、どの瞬間がよいか、ドキドキしながらタイミングを計るわけです。車でたとえればアイドリング(エンジンを始動させ、いつでも動き出せる状態で待機)が高まる感じです」
実はこのワクワク、ドキドキが重要だという。ただ漠然と見るときとは違い、被写体として集中して観察することで脳が活発に活動するのだ。構図を考える際には脳の図形認知にかかわる部分が刺激され、シャッターを押す決断力が集中にかかわる部分を鍛える。
諏訪東京理科大学の篠原菊紀教授の実験でも、撮影中は右脳と左脳がバランスよく働き、活動が高まることがわかっており、脳の機能維持につながる可能性があるという。
「写真愛好家は三脚や重い機材を担いで野山を歩くので、昔から健康にいいといわれてきましたが、体だけでなく、脳や心にも効くのです」
※女性セブン2020年9月17日号