今も昔も人気を博している刑事ドラマ。昭和時代では、『西部警察』や『太陽にほえろ!』など、名ドラマが数多く誕生したが、そこに出ていた俳優たちは当時、どんな思いで刑事を演じていたのか。
『太陽にほえろ!』で、常に松葉杖をついていたり、包帯を巻いていたりする、傷だらけの若手刑事・ボギーこと春日部一を演じたのは、ロックミュージシャンとして一世を風靡していた世良公則だ。そんな世良に当時を振り返ってもらった。
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ぼくが登場する前の刑事役といえば、優等生タイプが多かったんです。そして当時のぼくもまた、ロックバンドのボーカリストとして、スマートなイメージでステージに立っていました。
でも、そういったカッコいいイメージで刑事を演じては、意外性がないと思ったんですよね。そこでプロデューサーに“おっちょこちょいで情けないんだけど憎めない、三枚目な刑事役をやりたい”と提案したんです。普段のぼくのイメージを、このドラマでどこまで消せるかを最大のテーマにしたんです。
だから、居酒屋から出てきて鼻歌を歌うシーンがあっても、わざと下手に歌ったり、犯人を追いかけている最中も、途中でへたばってしまうようなキャラを提案しました。殉職するシーンでもボギーらしさを考えましたね。歴代の刑事たちのように、誰かを守ってカッコよく死ぬのではなく、道を歩いているときに突如刺されてあっけなく死ぬ方がボギーらしいな、と。
このドラマでは、役柄についてプロデューサーやほかの俳優たちと話し合い、一緒に作り上げることができたし、役者の希望やアドリブを受け入れてもらえる柔軟性があったんです。
現場も大らかな雰囲気でした。石原裕次郎さんがとにかく素敵なかたで、あるとき、“レコーディングが終わったらレコードを持って来いよな”と言われ、後日持っていくと、“おれも歌を歌ってたんだよ”と、ご自分のレコードと交換してくださったこともありました。ボギー役だけでなく、音楽活動も認めてくださったのがうれしかったです。
※女性セブン2020年9月17日号