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ランドセルから不動産まで「オンライン接客」が好調な理由

例年なら店舗を訪れて慎重に選ばれるランドセル(時事通信フォト)

例年なら店舗を訪れて慎重に選ばれるランドセル(時事通信フォト)

 コロナ禍で様々なものがオンライン化した。その中でも緊急事態宣言の時期に、顧客の来店が難しくなった実店舗が「オンライン接客」を始めたというニュースがいくつもあった。それから約3ヶ月、店舗に出かけずとも自宅で、オンラインで商品説明が受けられるとあり、かなり好評だ。通信販売とは何が違い、どんなメリットやデメリットがあるのだろうか。インターネットサービスに詳しいITジャーナリストの高橋暁子さんが、なぜオンライン接客が好評なのかについて解説する。

 * * *
「子どもが小柄なので、重くないランドセルがいいかなと思っているんですが」
「この商品など、軽くて丈夫で人気ですよ。蓋の部分がこのようにワンタッチで閉まるので、開けっ放しにならないところも便利です」

 例年なら店頭で聞こえるランドセル選びの会話が、今年はスマホやタブレット越しに多く交わされた。それというのも、ランドセルの購入時期が、新型コロナウイルスによる影響を大きく被ったからだ。

 近年、翌年4月の新一年生向けランドセルが購入される時期は、前年の4月から始まり5月のゴールデンウィークの時期に本格化、8月まで続く。親だけでなく祖父母がランドセル選びに加わることも多く、5~6万円ほどの価格帯が人気で、絶対に失敗できない買い物だ。カタログを集めてじっくり下調べをし、悔いのないように店頭で実際に子どもにも触らせるなどして、納得がいくものを選びたい。ところが、今年はそのランドセル選びのシーズンがまるごと新型コロナウイルスによる緊急事態宣言と外出自粛に重なってしまった。

 そこで登場したのが、前述のスマホやタブレット越しの「オンライン接客」。ポイントは、画面越しに顔や商品を見ながら店頭のように説明を求め、欲しいものに合うのはどれかといったようなやり取りを、リアルタイムにできる点だ。オンライン接客なら、商品の操作方法などを見ることもでき、気になるところは質問すれば答えてもらえる。

「店舗に行かなくて選べたので、よかった」と、オンライン接客を使って上の子のランドセルを購入したという30代主婦は語る。「妊娠中で外出がきついし、インターネット通販は商品が思ったものと違ったりして失敗も多くて心配だった。質問もできたから、思った通りのものが買えて満足」。安くない買い物なので緊張もあったが、納得がいく結果になったようだ。

 実店舗で接客を受けると、つい購入しなければというプレッシャーを感じるという人もいるだろう。営業トークに押し切られて、おすすめの商品を購入してしまった経験がある人もいるのではないか。しかしオンライン接客は、自宅でスマホやタブレット越しに説明を聞くため、顧客側は比較的冷静でいられるというのもメリットだ。前述の主婦も、「遠慮して聞けないような質問もできたし、普段ならつい高いものを買わされてしまうことも多いのに、値段も予算内に収められた。その意味でも満足」。

 ランドセルのオンライン接客を導入している専門店は多いが、なかでも三越伊勢丹が知られている。購入を検討している顧客に対して「LINE・Zoom・来店予約」の3段階を用意し、LINEでのチャットによる相談や動画による接客、Zoomでのビデオ通話によるオンライン接客の他、店頭で直接手にとって見ることも可能としたのだ。その結果、ランドセルの売り上げは2019年同期比で120%となったという。

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