国内

「一生働くとは思ってなかった」と70代のUber配達員は言った

待機するウーバーイーツの配達員ら(時事通信フォト)

待機するウーバーイーツの配達員ら(時事通信フォト)

 配車アプリ「Uber(ウーバー)」のフードデリバリーサービス「Uber Eats(ウーバーイーツ)」といえば、出前をしていない店の料理を配達してもらえるサービスとしてじわじわ人気を広げ、新型コロナウイルスによる自粛生活でいっきに利用者を広げた。と同時に、すき間時間の仕事として広がり始めていたウーバー配達員が、街じゅうを走っているのではと思うほど目に見えて増えた。俳人で著作家の日野百草氏が、今回は、都内のウーバー配達員たちについてレポートする。

 * * *
「ウーバーね、ほとんど稼ぎにはなんないね」

 都下の駅前にあるマクドナルド、こんな多摩の田舎でもウーバーの配達員(正式には配達パートナーと呼ばれる)は待っている。「ウーバーさまー、○○番のウーバーさまー」というシュールな声が店内から聞こえてくる。配達員は商品を受け取り、歩道に停めた50ccのスクーターに戻る。その傍らには「Uber Eats」と書かれた大きな黒バッグ。配達員は商品をバッグに詰めて背負い込む。とある取材の途中に見かけた、今や何も珍しくもない都市の一風景だ。しかし私は配達員を見て驚いた。マスク姿のお爺ちゃんだ。

「でも年齢関係ないし面倒くさい人間関係もない、稼ぎにはならないけど気楽だよ」

 配達後、もう一度マクドナルドに戻ってきたところで話を聞いた。お爺ちゃんはマクドナルドとその近くの牛丼屋、そして個人のネパールカレー屋と韓国料理屋を中心に配達しているという。炎天下の路上、しかしここにいれば注文すぐ配達できるというわけだ。

「シルバーに登録してたんだけど全然仕事ないからウーバーにしたの。コロナでウーバー稼げるって聞いたから」

 市のシルバー人材センターで駅前の自転車監視や草刈りをやっていたが、自転車は業者と市の契約で半自動化され、市道や施設の草刈りはコロナで集まれないからと人数を減らされているそうだ。もっともコロナ以前からシルバーの仕事は減っていて、一昔前と違い入会したから仕事があるとは限らない。私もこのシルバー人材センターの問題は、かつて闇の部分も含めて取材したことがあるのでよくわかる。

「聞いてたほど稼げないけど、この歳じゃどこも雇ってくれないからね。でもこんなお爺ちゃんでも、ウーバーは働けるからね」

家は持ち家だけど、まあ足りないよね

 彼は70代(実年齢を教えてくれたが年代表記とする)だという。去年死んだ私の父と同じ年代だ。男性の平均寿命は81.41歳(2019年・厚生労働省)なので、数字上の話だと働ける時間の残りは少ない。ちなみにウーバーの配達員は18歳以上というだけで上限はない。100歳でも働ける。

「うん、一生働くとは思わなかったね。まあ、いろいろだよ」

関連キーワード

関連記事

トピックス

中村佳敬容疑者が寵愛していた元社員の秋元宙美(左)、佐武敬子(中央)。同じく社員の鍵井チエ(右)
100億円集金の裏で超エリート保険マンを「神」と崇めた女性幹部2人は「タワマンあてがわれた愛人」警視庁が無登録営業で逮捕 有名企業会長も落ちた「胸を露出し体をすり寄せ……」“夜の営業”手法
NEWSポストセブン
愛子さま、初の単独公務は『源氏物語』の特別展 「造詣が深く鋭い質問もありドキっとしました」と担当者も驚き
愛子さま、初の単独公務は『源氏物語』の特別展 「造詣が深く鋭い質問もありドキっとしました」と担当者も驚き
女性セブン
“くわまん”こと桑野信義さん
《大腸がん闘病の桑野信義》「なんでケツの穴を他人に診せなきゃいけないんだ!」戻れぬ3年前の後悔「もっと生きたい」
NEWSポストセブン
中森明菜
中森明菜、6年半の沈黙を破るファンイベントは「1公演7万8430円」 会場として有力視されるジャズクラブは近藤真彦と因縁
女性セブン
食品偽装が告発された周富輝氏
『料理の鉄人』で名を馳せた中華料理店で10年以上にわたる食品偽装が発覚「蟹の玉子」には鶏卵を使い「うづらの挽肉」は豚肉を代用……元従業員が告発した調理場の実態
NEWSポストセブン
報道陣の問いかけには無言を貫いた水原被告(時事通信フォト)
《2021年に悪事が集中》水原一平「大谷翔平が大幅昇給したタイミングで“闇堕ち”」の新疑惑 エンゼルス入団当初から狙っていた「相棒のドル箱口座」
NEWSポストセブン
昨年9月にはマスクを外した素顔を公開
【恩讐を越えて…】KEIKO、裏切りを重ねた元夫・小室哲哉にラジオで突然の“ラブコール” globe再始動に膨らむ期待
女性セブン
稽古まわし姿で土俵に上がる宮城野親方(時事通信フォト)
尾車親方の“電撃退職”で“元横綱・白鵬”宮城野親方の早期復帰が浮上 稽古まわし姿で土俵に立ち続けるその心中は
週刊ポスト
大谷翔平の妻・真美子さんの役目とは
《大谷翔平の巨額通帳管理》重大任務が託されるのは真美子夫人か 日本人メジャーリーガーでは“妻が管理”のケースが多数
女性セブン
17歳差婚を発表した高橋(左、共同通信)と飯豊(右、本人instagramより)
《17歳差婚の決め手》高橋一生「浪費癖ある母親」「複雑な家庭環境」乗り越え惹かれた飯豊まりえの「自分軸の生き方」
NEWSポストセブン
店を出て染谷と話し込む山崎
【映画『陰陽師0』打ち上げ】山崎賢人、染谷将太、奈緒らが西麻布の韓国料理店に集結 染谷の妻・菊地凛子も同席
女性セブン
殺人未遂の現行犯で逮捕された和久井学容疑者
【新宿タワマン刺殺】ストーカー・和久井学容疑者は 25歳被害女性の「ライブ配信」を監視していたのか
週刊ポスト