現役最高齢の女性漫才師で漫才協会名誉会長の内海桂子さんが8月22日、97歳で亡くなった。多くのメディアに訃報記事が載り、「1922年に千葉で生まれ、浅草で育った」と来歴が紹介されたが、生前の本誌の取材には「実は、戸籍上は1923年生まれなんです」と明かしていた。
どういうことか。当時94歳の内海さんは取材にこう話していた。
「もともと1922年9月12日が誕生日だと思っていたのですが、戸籍上は翌1923年1月12日生まれになっていた。それを知ったのは戦時中の1942年のことです。海の向こうで戦う兵隊さんの慰問に行く時に、身分証明書を作らないといけなくなって役所に行き、そこで初めて知ったんです。
両親が私を産んだ時はともに20歳で、今でいう駆け落ちってやつ。近くに相談に乗ってもらえる人もいなくて、役所にも届けなかったみたい。結局、役所に届け出ればミルクがもらえると知って、出生届を出したようです。後になって母親が事情を説明してくれましたが、そういう時代だったんですね。戸籍の訂正もできるみたいだけど、とくにするつもりはありませんね」
こうした経緯があったため、周囲から「9月の誕生日」と「1月の誕生日」の両方を祝ってもらうこともあるといい、「これじゃひと様の倍のペースで歳をとっちゃうわね」と笑っていた。
「100歳で舞台に? 立ってみたいねぇ」と話していたが、目前にして波乱の生涯に幕を下ろした。謹んでご冥福をお祈りいたします。
※週刊ポスト2020年9月18・25日号