『相棒』や『特捜9』など、数々の刑事ドラマが人気となっているが、その源流は昭和のドラマにあるだろう。なかでも、刑事たちの人間性にスポットを当てて人気となったのが『太陽にほえろ!』だ。このドラマでは、萩原健一や松田優作など、多くのスターが刑事として登場、そしてその殉職シーンも話題となった。
新人刑事の教育係だったゴリさんこと石塚誠刑事役を演じたのが竜雷太だ。実は撮影現場でも、役柄同様、新人俳優の教育係を任されていたという。そんな竜雷太に、当時の話を聞いた。
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番組の初回から10年間、ゴリさんを演じました。最初の数年間はよく走り回っていましたが、どんどん新人刑事たちが入ってきて、そのうち走るのは彼らの役目となり、ぼくは役でも現場でも、ベテランと新人の間の“中間管理職”のような立ち位置になっていきました。
そのきっかけとなったのは、テキサス役の勝野洋さんを指導したことでしたね。彼は柔道経験のある猛者なのに、ボス(石原裕次郎さん)の前では緊張のあまり“はい、行ってきます”の一言すら出ない。
そこで撮影を中断して廊下に連れ出し、2人で練習してから撮り直したことがあります。そのことがあってからは、若手俳優の演技に至らない点があると、ボスがぼくをチラっと見るように…。それで、ぼくが若手の緊張をほぐしたり、叱咤激励したりするようになったんです。
ラガー刑事役だった渡辺徹さんにいたっては喝を入れすぎたようです。ぼくが殉職してドラマを卒業した後、彼が急にぽっちゃりしだしたものだから、“ゴリさんがいなくなったから安心したんだろう”なんて言われたくらいですからね。
成長してほしい一心でぼくも一生懸命だったけど、ちょっと厳しすぎたのかなと、反省しましたね。
こんなふうに、若手俳優とかかわりながらも、一方では石原裕次郎さんともよく飲み明かしました。酒の席で“やっぱり仕事は映画だよ”と口癖のように話す石原さんに、“ボス、映画映画って言いますけど、私たちはこのテレビに命をかけているんです”と言ったことがあるんです。するとそれ以来、“よしわかった、お前たちがそんなに命をかけてやっているんだから”と、テレビに本腰を入れてくれるようになったんです。
ぼくが殉職するシーンでは、歴代の刑事役で唯一ボスが看取ってくれたのも印象深かったですね。時間も1時間半のスペシャル版に拡大。ぼくにとっては10年間がんばった最高のごほうびになりました。
【プロフィール】
竜雷太/1940年生まれ。NHK「連続テレビ小説」や「大河ドラマ」など、数多くの作品に出演。
※女性セブン2020年9月17日号