小泉政権を引き継いだ第一次安倍政権を見るように、過去、長期政権の後を引き継いだ首相は苦難を背負わされてきた。では、次の政権にはどんな“宿命”が待ち構えているのか。
「安倍辞任」を見越していたかのようなタイミングで共著『長期政権のあと』を上梓したばかりの元外務省主任分析官で作家の佐藤優氏と、政治学者・山口二郎氏(法政大学教授)が緊急対談した。
山口:安倍政権で7年8か月の間に問題が積み重なっている状況で、さらにコロナ禍での突然の辞任ですから、次の総理大臣は大変な苦労があると思います。出馬を表明した岸田政調会長が「貧乏くじであろうとも」という言い方をしたのは、客観的に見ているなと思いました。
佐藤:私も全く同じ認識です。安倍政権の残務整理では大変な不満が出てくるはずで、冷静に考えれば、次期政権は短命に終わる可能性が高い。ですが、目の前に権力があれば3日でもやりたいのが政治家の本能です(笑い)。
山口:安倍首相の前に長期政権を築いたのが小泉純一郎首相でしたが、そのあとを引き継いだ安倍晋三、福田康夫、麻生太郎の各政権はいずれも短命に終わり、最後に政権交代を招きました。
小泉政権と安倍政権には、官邸への権力一極集中という共通点がありますが、安倍政権について、佐藤さんは「首相機関説」を唱えていましたね。
佐藤:ええ。カリスマ性で自ら政治イニシアチブを取った小泉さんと違い、安倍さんは側近に政策の立案を任せ、やりたい政策にはアクセルを踏み、そうでない場合にはブレーキをかけてきました。これは上がってきた事案を裁可して同意できなければぷいと横を向いた戦前の天皇に近い。まさに「天皇機関説」ならぬ「首相機関説」です。