アメリカ大統領選挙は、9月末から始まるテレビ討論会に向けて熱を帯びてきた。トランプ大統領とバイデン氏の議論は必ずしもかみ合っていないが、米国民の関心のひとつは2人の年齢と健康問題だ。バイデン氏77歳、トランプ氏74歳。それぞれメディアでは健康不安や持病、果てはバイデン氏の痴呆症疑惑まで取り沙汰されている。そこにトランプ氏がさらなる爆弾を投下した。ニューヨーク在住ジャーナリスト・佐藤則男氏がリポートする。
* * *
トランプ大統領は、9月29日に行われる第1回のテレビ討論会を前に強烈な先制攻撃を仕掛けた。民主党のバイデン候補に「ドラッグテスト」を要求したのである。
すでに陣営の作成したYouTube動画で、「ドラッグをやっているかどうかはっきりさせろ」と要求し、さらには「トランプ・チャンネル」と呼ばれることもあるFOXニュースの売れっ子女性アンカーウーマンであるローラ・イングラムによるトランプ氏本人への独占インタビューでも、自らの口で明確に要求した。
それらの主張によれば、トランプ氏は、民主党予備選の討論会などで、バイデン氏が元気すぎて、何かドラッグを使っているのではないか、と疑いを持ったのだという。
またトランプ氏らしい荒唐無稽なでっち上げだと笑うわけにはいかない。彼の指摘は、アメリカ国民にはそれなりに真実味をもって受け止められてきたからである。確かにバイデン氏の映像を紹介しながらそう言われてみると、筆者も「不自然だな」とチラリと思ったくらいである。もちろん筆者はバイデン氏が何か劇薬のようなものや違法なドラッグを使っているとは簡単に信じることはできないが、有権者のなかには、「きっと何か使っているに違いない」と疑う人も少なからずいるだろう。討論会など「ここぞ」という舞台でのバイデン氏は、顔は輝き、元気はつらつで、満面にスマイルを浮かべている。77歳という年齢や、普段の様子に比べて輝きすぎている、と見えても不思議はないのである。