児童虐待のなかでもネグレクト(育児放棄)の発見は難しい。それは、危機にさらされている子供達のほとんどが、家の外では問題ないように見えてしまうからかもしれない。さらに今年は新型コロナウイルス感染防止のために家庭訪問の回数を減らさねばならないため、虐待そのものを見つけるのが困難になるのではと危惧された。その怖れのとおり、休校あけに次々と明るみに出ている子どもへの虐待事例について、ライターの森鷹久氏がレポートする。
* * *
「2ヶ月近く学校が休みになりましたが、その間に急激に痩せた、という児童が学校全体で数名いたのです」
東京都内の公立小学校教員・徳島信一さん(30代・仮名)は、コロナ休校のおかげで「見えなかった虐待」が可視化されたと訴える。
「特に貧困家庭、というわけではないのですが、親が子供にまともな食事をさせていないという事例が明るみになった格好です。夏休みなら1ヶ月ですが、今回はそれ以上の期間が休みになり、普段は給食でなんとか栄養がとれていた児童達が、痩せたり、成長が止まったりしたのです」(徳島さん)
それとは逆に、極端に太った、という児童もいたという。どういうことか。
「聞けば、三食の食事をまともに作ってもらえず、朝から晩までカップ麺、父親も母親も仕事で出かけていて、その間にお菓子やジュースは食べ飲み放題。こちらも貧困家庭ではないのですが、育児放棄に近いというか…」(徳島さん)
どちらの事例も、親が子供たちの健康に気を配っていれば防げる問題だ。おそらく今までは、学校へ行くことで生活リズムを作ってもらい、給食をとることで栄養のつじつまを合わせていたのだろう。学校に頼りすぎていた保護者の負担が、休校によって子どもにしわ寄せされた結果の痩せすぎ、太りすぎだろう。