はたして、コロナ禍のライブは成立するのか──。9月11日、あと半年足らずで還暦を迎える歌手の田原俊彦(59)が新曲『愛は愛で愛だ』(作詞・岩里祐穂、作曲・CHOCOLATE MIX、編曲・保本真吾)を引っ提げて、神奈川県の厚木市文化会館で毎年恒例の全国ツアーをスタートさせた。
『Love Paradise』と銘打った今年は全16公演の予定だったが、新型コロナウイルスの感染拡大により、7公演に縮小されたため、厚木が初ステージとなった。
入場前にはアルコール消毒などが行われ、客席もソーシャルディスタンスを確保。ステージと客席の距離も離された上で、本人が登場した。通常であれば、観客は立ち上がり、大きな歓声を上げる。しかし、コロナ禍の今年は着席したままで、決して声は出さず、懸命に手を叩いて迎えた。
そして、田原が1曲目を歌い終えると、客席から割れんばかりの拍手が数十秒間に渡って続いた。その大きさと長さは、近年の東京近郊の公演では聞かれない質と量を醸し出していた。
例年と比べ、観客は50%以上減っている。それにもかかわらず、その音はいつも以上に会場に鳴り響き、こだました。数は半分になっても、一人ひとりの拍手は2倍、3倍もの重みを持っていた。田原はその余韻を味わった上で、2曲目を歌い始めた。その後も、魂のこもった拍手が会場を包んだ。