認知症の母(85才)を支える立場である『女性セブン』のN記者(56才)が、介護の日々の裏側を綴る。今回は、入れ歯にまつわるエピソードだ。
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いままで自分の歯でなんでも食べられていた母の奥歯が抜けそうだ。抜けたら選択肢は入れ歯しかないが、高齢になってからは慣れるのが難しいという。食欲旺盛、食べることが生き甲斐の母にとって、のっぴきならない大問題に頭を抱えている。
奇跡が続いた3年間 先延ばしにしていた大問題
「もう奥歯の歯根はなくなっていて、歯は奇跡的にくっついているだけ……」
歯科医から告げられて恐れおののいたのはもう3年前のこと。実はこの“奇跡”、どういうわけかいまも継続中だ。母は要介護になった7年前の時点で、おそらく10年以上は歯科に行っていなかっただろう。私の世代まではまだ、歯科は“痛くなってからしぶしぶ行くもの”だった。高齢者にとって口腔ケアほど大事なことはないと知ったのは、介護の取材を始めてからだ。
「私は毎日歯を磨いているし、痛いところもないわ!」と言い張る母を近所の歯科クリニックに連れて行き、診察の結果、歯科医に言われたのが冒頭のせりふだ。歯周病がかなり進み、歯磨きが行き届いていないとも言われた。
「本当ならすぐに抜歯して入れ歯を入れるべきところなんだけど、高齢になると入れ歯に慣れるのが結構大変。いま食事が楽しめているなら、歯のお掃除をしながら見守りましょう」
と、言ってくれた女医さんが女神様に思えた。母の生活に寄り添ってくれることに感謝しつつ、とりあえず入れ歯問題にも蓋をして、幸か不幸か3年もたった。
「腫れも出てきているから、そろそろ限界かも」と、先日の診察で女医さんもため息。この3年、確かに食事も楽しんだが、入れ歯問題のハードルはさらに上がったのだ。