【著者に訊け】澤村伊智氏/『うるはしみにくし あなたのともだち』/双葉社/1600円+税
「ある日、謎の死を遂げたクラスで一番きれいな子。カーストの頂点に君臨するマドンナに一体何があったのか? というところから、この“相手を殺さずに顔だけを変えてしまう”お呪いの構想が浮かびました」
澤村伊智氏の最新長編、その名も『うるはしみにくし あなたのともだち』は、都立四ツ角高校3年2組の中心的人物〈羽村更紗〉の唐突な自殺と以来相次いだ不可解な事件を、担任教師〈小谷舞香〉や犯人らしき人物の独白で追ったホラーミステリーだ。2組では、美しく聡明な更紗や「ナンバー2」の〈夕菜〉らが上位グループを形成。美醜や学力による棲み分けが暗黙裡になされていた。
そんな中、語り手である〈わたし〉は選ばれたのだ。実はこの高校には平成元年に苛めを苦に自殺した〈姫崎麗美〉に因んだ〈姫の呪い〉なるお呪いの噂があり、自分以外の顔を醜くも美しくも変えられるという。その行使者には女子だけが選ばれ、実在しないはずの雑誌〈『ユアフレンド』〉昭和64年4月号がそっと届くのだ。
その古い雑誌をついにある日自分の鞄の中に見つけた時、彼女は確信する。〈わたしは醜い〉〈だからこそ選ばれた〉と。
「今回は美醜とスクールカーストという、お題ありきの執筆依頼でしたが、“40歳のオッサン”の僕が今時の10代女子の学校事情に詳しいわけもなく、かなり身構えました。でも高校では女子が男子の数倍多いクラスに三年間在籍していたので、彼女と彼女はいつも一緒だけど、そんなに仲は良くないんだな、など女子の人間関係は自然に見えてくるものがありました。
当時もスクールカーストという言葉がないだけで序列はありましたし、美醜は重要要素でした」