テレビの世界では、体調不良の出演者が「大事をとってお休み」するケースが増えている。共演者やスタッフへの感染予防を徹底するということで、好意的に受け止められているが、この問題に頭を抱える人も少なくない。特に、一般企業となれば、一大事になってしまうことも……。人事ジャーナリストの溝上憲文氏が語る。
「ある福祉関連企業では、6月の株主総会前に広報担当者の女性社員が発熱。その女性は会社を休むことになったのですが、その間、会社では大変な騒動になっていたのです。女性は、それまで社長ら重役たちと総会に向けて会議を重ねていたため、重役たちが『社長に感染した可能性が!』と、震え上がった。
結果的に広報担当者は陰性で事なきを得たそうですが、検査結果が出るまでの間、『株主総会で議長を務める社長が出ないわけにはいかない。もし彼女が陽性だったら、社長も感染している可能性がある。他の人にうつさないようにフェイスシールド、手袋、マスク、帽子などを着用し完全防備で出席してもらうしかない』と大真面目に議論していたと言います」
PR会社の管理職はこんな経験をした。
「取引先と会食をした直後に発熱。37度を少し超えた程度しかなく、ただの風邪だと思っていたのですが、『念のため休みます』と会社に報告したら大ごとになってしまった。
会社は大慌てで相手先に電話をし、私も会食相手も自宅待機となりました。会食相手とは重要な案件を進めていたので、相手の会社にも迷惑をかけてしまうことになり、PCR検査の結果が出るまで心が安まらなかった。
陰性とわかった後は、相手の会社に取締役と再度ご挨拶にいきましたが、その後取引先とは気まずい雰囲気に……」
※週刊ポスト2020年10月2日号