8月中旬、都内のラジオ局から軽やかな足取りで出てきたのは、歌手の石井竜也。この9月22日が誕生日で、61歳になった。スラッと細い体型に金髪ロングヘア姿は、とても還暦過ぎには見えない若々しさである。
今年は、6月に還暦記念のソロライブ、9月には欧州のバルカン室内管弦楽団とのスペシャルコンサート、そして、10月からは結成35周年を迎える石井がカールスモーキー石井としてメインボーカルを務める米米CLUBの全国ツアーを開催予定だったが、全て新型コロナウイルスの影響により延期となった。
米米CLUBは、1980年代のバブル期に大ヒットしたグループ。あるベテラン音楽制作者は「当時は、毎回国内最高額といわれるほどに大金をかけた豪華なステージがテーマパークのようで、そのきらびやかな“エンターテインメントショー”がファンを虜にしていました。まさにバブル期のアーティストの象徴でした」と振り返る。
それだけに、今回の延期の決断時も、石井としては「お祭り騒ぎのバンドゆえの、苦渋の決断でした」と説明していた。バンドとしても「大きな声を出したり、踊ったり、騒いだりすることができないコンサートは考えられません。無理しては楽しめないし、無理をすると、どこかが歪む。頭でも心でもなく、身体のどこかで、ツアーに向かうことが出来ない。悔しいけれど、本音です」とコメントした。
前出のベテラン音楽制作者は「石井さんは、自身のライブパフォーマンスにはとてもこだわる方ですから、妥協した形は許せなかったのでしょう」と話した。
1992年のラブソング『君がいるだけで』は約300万枚セールスのメガヒットで日本レコード大賞も受賞。1997年には東京ドームで解散コンサートをするほどに栄華を極めた。しかし、絵画やオブジェ制作など多彩なアーティスト活動をしていた石井は、1990年代半ばには映画2作の監督も務め、その失敗がもとで個人での負債を10億円も抱えたという。