稲垣吾郎、草なぎ剛、香取慎吾──。かつてに比べテレビで姿を見る機会は減った「新しい地図」メンバーだが、映画や舞台などでは相変わらず活躍を見せている。9月25日からは、草なぎ剛の主演映画『ミッドナイトスワン』の全国公開が始まった。同映画において彼が演じるのは、親から虐待されて育った少女と疑似親子関係を築くトランスジェンダー女性役。宮藤官九郎や園子温といった著名人からも続々と絶賛コメントが寄せられており、草なぎの新たな代表作となりそうだ。
もともと“俳優・草なぎ剛”を高く評価する人々は多い。不世出の劇作家・つかこうへい(故人)もその一人だ。口立てといわれる独特の演出方法で、稽古や上演を重ねるごとにセリフや演出を変化させていくのが、つか演劇の特徴だった。だからこそ稽古場において絶対的な権力を握っているわけだが、そんなスパルタ演出家であるつかが草なぎを「天才」と認めているのだ。
劇作家の三谷幸喜は「役者に役が乗り移る瞬間を、僕は初めて見た」と草なぎについて語り、『ミッドナイトスワン』でメガホンをとった内田英治監督は「役と同化している」と草なぎの演技を表現した。他にも直木賞作家で脚本家の松井今朝子、脚本家の坂元裕二といった錚々たる面子が俳優・草なぎを称賛している。
「ストイック」という言葉で評されることが多い草なぎだが、本人は9月21日に投稿したYouTube動画で「(セリフを)覚えないと怒られるじゃないですか」「睡眠を削って何かするってことはまずやらない」とひょうひょうと語り、「そんなにストイックな性格でもないんだよね」と謙遜していた。しかし、ストイックではない人間が役作りのために肋骨が浮き出るほどの過酷な減量を敢行するだろうか……?
また、草なぎは同じ動画で役作りについても明かしている。『ミッドナイトスワン』について、「本当に難しい役だったんだけど、あまり難しく考えないで、『とりあえずやってみよう!』みたいな感じで演じた。あとは周りの監督さんとか状況が僕を作ってくれる」と振り返っており、あくまでサラリとした口ぶりが印象的だ。本当に苦労を苦労と感じていないのか、それとも元トップアイドルらしく、苦労をことさら表に出さないことを美学としているのか? 草なぎの穏やかな微笑みからは、その真意は読み取れない。