「“私が信じていること”をやったからそれでいい」──大坂なおみ選手(22才)が2年ぶり2度目となる優勝を飾り閉幕した全米オープンテニス(9月13日)。1回戦から決勝まで、人種差別による被害を受けた7人の犠牲者の名前を記した黒いマスクをつけて入場した。
「7枚では足りないのが悲しい」「テニスは世界中で見られているので、彼らのストーリーを共有するのはすごく大事なこと」と話すように、世界が注目する舞台で、繰り返される黒人への暴力連鎖を訴えた。この行動に対する批判も起こったが「勝つための刺激になった」と優勝への原動力にしていた、と本人。「あなたはどんなメッセージを受け取ったのか。その方が大事です」と全世界に放った大坂選手の“サーブ”をあなたはどう受け止めますか?
●1回戦(ブレオナ・テイラーさん)
26才の救急救命士だったテイラーさんは今年3月、薬物事件捜査で自宅に踏み込んだ警察官により射殺。自宅から薬物は見つからずテイラーさんは事件と無関係だった。警察官の刑事責任は問われず、米ケンタッキー州ルイビル市が遺族に約12億円を支払うことで和解が成立した。
●2回戦(イライジャ・マクレーンさん)
マッサージ療法士だった23才のマクレーンさんは買い物から帰宅途中、不審な人物がいるという通報から警察官に呼び止められ、身動きのとれない状態で頸動脈付近を押さえつけられて病院で死亡(2019年8月)。3人の警察官は休職処分となったが起訴されず、再び職務復帰をしている。
●3回戦(アマド・オーブリーさん)
母親と暮らすオーブリーさんは、ジョギング中に白人親子に車で追いかけられて射殺(2020年2月)。事件から2か月もの時間が経った後に親子は逮捕され、撃った理由を「強盗だと思った」と主張。逮捕のきっかけとなった動画には、車の横を走り過ぎようとしたオーブリーさんを引き留め、銃撃する様子が残されていた。
●4回戦(トレイボン・マーティンさん)
17才の高校生だったマーティンさんは買い物帰りに自警ボランティアに後をつけられ、口論となった末に射殺された(2012年2月)。この事件を機に「ブラック・ライブズ・マター(BLM)」運動が始まり、広がりをみせた。
●準々決勝(ジョージ・フロイドさん)
警察官に膝で首を地面に押さえつけられて死亡したこの事件の動画がSNSで拡散し、日本でも「BLM」運動の広がりをみせた(2020年5月)。警察官は第2級殺人罪で起訴されている。
●準決勝(フィランド・カスティールさん)
車を運転していたカスティールさんは、ライトが付いていないと警察官に止められ、取り調べ中に射殺(2016年7月)。車には恋人と4才の子供も同乗していた。警察官は罪を問われたが、陪審員による裁判で無罪となった。
●決勝(タミル・ライスさん)
公園でエアガンを手にして遊んでいたライスさん(当時12才)が銃所持の通報で駆け付けた警察官に撃たれて死亡した事件。警察官の起訴は見送られた。ライスさんの母は大坂選手の行動に「息子を覚えていてくれて、ありがとうと言いたい」と語った。
写真■アフロ
※女性セブン2020年10月8日号