菅義偉・首相は新内閣を「国民のために働く内閣」と命名した。“官房長官時代は安倍晋三前首相を守るために働いたが、これからは心を入れ替え国民のために働く”というのなら喜ばしい。だが、どうやら本音は違う。「影の総理」が表の総理になった途端、二階俊博・幹事長、麻生太郎・副総理に操られ、政界は“長老政治家の楽園”に向かっているのだ。
政治ジャーナリスト・野上忠興氏は「菅一強」にはほど遠い政権の実情をこう指摘する。
「菅首相は総裁選で圧勝したとはいえ、無派閥で党内基盤が極めて弱い。“総理にしてもらった恩人”である二階幹事長の意向には絶対逆らえない。加えて、いまは渋々、菅氏を支持している麻生派が敵に回った途端に主流派体制が崩れて政権維持が危うくなるから、麻生副総理の言うことも聞かざるを得ない」
その麻生氏が菅氏に迫っているのが解散・総選挙だ。
「下手したらすぐ(解散・総選挙)かもしれない」
「早期解散は考えるべき」
麻生氏はそう早期解散論を繰り返している。麻生側近が語る。
「麻生氏の長男の将豊氏(麻生商事社長)は今年、地元・飯塚の青年会議所理事長に就任し、後継の準備を整えた。麻生夫人も後援会も、将豊氏に早く国政に出てキャリアを積ませたい。だが、麻生氏はもう1期やった後に息子に譲るつもりだから、身内から引退を求められる前に早期解散させて選挙に出たい。副総理を続けるのはそのためだ」