安倍晋三前首相、歌手・松任谷由実、俳優で画家の片岡鶴太郎、俳優の石田純一、フレンチシェフの三國清三さん、これらのメンバーの共通項。それは、昭和29年(1954年)生まれであることだ。そして、彼らは昭和29年生まれが集う「29年会」のメンバーでもある。そのほかにも。作家の林真理子、女優の秋吉久美子なども、昭和29年生まれである。
オイルショックにバブル経済、そして崩壊──浮き沈みの激しい時代を泳ぎながらもファッションを楽しみ、「ゴーイングマイウエー」を貫いてきた昭和29年生まれ。
新型コロナウイルスで世の中が一変したいまこそ、彼らの姿勢に学ぶときなのではないか。ライフシフト・ジャパン取締役CROの豊田義博さんが言う。
「世代意識は成人前後の社会に規定されます。29年生まれは、やはり団塊の世代の学生運動の挫折とオイルショックの影響が大きい。この世代は、20才前後で世の中の大きな変わり目を経験して、新しい価値観を受け入れる素養が生まれました。
例えば、それまでの女性シンガーは男性が作る世界をなぞっていたけれど、ユーミンはまったく新しい世界を切り開いたし、林真理子さんもそれまでにいなかったアバンギャルドな書き手です。29年生まれは彼女らのように、本人の生き様や考え方を表に出して表現する人が多い。
前の世代には『はしたない』と眉をひそめる人もいたけど、同世代には応援と共感で迎えられました」
昭和29年生まれの3学年下にあたり、女性セブンで『いつも心にさざ波を!』の連載を持つ「オバ記者」こと野原広子さんは、昭和29年生まれは「人のいいファーストペンギン」と説く。
「18才で上京したとき、道に迷ったら、ちょっと年上のイケてるお姉さんに聞くと決めていました。大学生でも勉強よりファッションに興味がありそうな軽めのお姉さんで、ハマトラを着ていたら間違いなく29年生まれ(笑い)。
2~3年前に上京した彼女らは、年下のほっぺの赤い田舎娘にやたら親切でたくさん助けられました。私の同学年の友人も、『上から目線の団塊の世代と違って、集団でなく個人で考える人たち』と評します。
29年生まれは、好奇心の翼をいっぱいに広げて個人で生きる、人のいいファーストペンギン。時に批判を受けるのも、未開の地に飛び込んで行こうとしているのだから致し方ないことだと思う」(野原さん)
常に新しい道を切り開いてきた1人が片岡鶴太郎だ。
お笑い芸人・俳優として人気絶頂の32才でボクシングを始めて、芸能活動のかたわらプロライセンスを取得し、40才になる手前に絵を描き始め画業の道へ。さらに還暦近くでヨーガ、瞑想を始め、毎朝5時間のヨーガルーティンを続ける。
「ぼくがやったことといえば、ボクシングに絵画、ヨーガ、それと離婚(笑い)。ぼくだけじゃなく、29年会の人は志を持ち、好きなことを突き詰めています。ぼくらの世代は個々が楽しみながら一生懸命、“鼻歌交じりの命がけ”で頑張るんです」(片岡)