母校の襷をつなごうとする走者たちに、沿道に詰めかけた観衆が小旗を振って声援を送る──正月の風物詩である箱根路の光景だが、新型コロナ対策で来年は全く違ったものとなるかもしれない。
関東学生陸上競技連盟(関東学連)は9月20日、公式ホームページで箱根駅伝を含む主催大会を「無観客開催」とすることを発表。出場校の応援団が応援を行なわないことなどが明らかにされ、OBや選手の家族ら関係者にも応援自粛が要請された。沿道ののぼりもなければ、小旗の配布もないという。
ただ、“会場”は出入り口のある競技場ではなく、大手町─芦ノ湖間の公道だ。どうやって「無観客」とするのだろうか。
「例年、沿道の観衆は2日間で100万人超といわれる。コース脇は基本的に歩道だから、観客をゼロにするのは不可能。今年3月の東京マラソンも主催者が応援自粛を要請したが、それでも約7万人の観衆が沿道に集まった」(スポーツ紙デスク)
どう実現するつもりかを関東学連事務局に尋ねたが「ホームページでお伝えしたのが現段階でのすべてです。今後も順次、公開できる情報を公開していく」とするのみ。
ただ、応援自粛が大々的にアナウンスされれば、影響は大きい。近年は駅伝ブームの高まりを受け、コース沿いの飲食店や宿泊施設は正月の“特需”に沸いてきた。
たとえば箱根・宮ノ下の富士屋ホテル駐車場では、観光協会主催で応援イベントが開催される。箱根路の醍醐味である5区・6区を間近で見るために例年2000人以上が集まる。ここで先着100人に振る舞われるのが、地元の「渡邊ベーカリー」の温泉シチューパン。よく知るファンが毎年、早朝から行列をつくる。同ベーカリーのオーナーは「無観客」の発表をどう受け止めたか。
「まだ観光協会から正式な連絡はありませんが、今回のイベントは中止でしょう。我々は箱根駅伝を応援する立場。無観客でも大会を開催する判断をしていただいたほうが嬉しい。昔は三が日は休んでいたけど、応援のお客さんが増えて営業を始めたくらいですから、もちろん商売的には大打撃。でも切り替えて再来年の正月にイベントができればいいと思っています」
ウィズコロナの箱根路は、どのようなものになるのか。
※週刊ポスト2020年10月9日号