「私のような普通の人間でも、努力をすれば総理大臣を目指すことができる。まさにこれが日本の民主主義ではないか」
自民党総裁就任会見でそう語った“叩き上げ政治家”の菅義偉氏は、親から地盤(後援会)、看板(知名度)、カバン(政治資金)を引き継いで楽に当選してきた世襲議員を嫌う。
だが、麻生太郎・副総理(80)と二階俊博・幹事長(81)は“菅は逆らえない”と世襲を進める構えだ。そんな菅氏の足元を見て、自民党長老組の「定年廃止論」が勢いづいている。
最長老の伊吹文明・元衆院議長(82)と二階氏、麻生氏の80代トリオをはじめ、自民党には75歳以上の後期高齢者議員が衆参22人、70歳以上の議員は衆参70人にのぼる。しかし、党の内規で、衆院の比例代表は73歳、参院の比例代表は70歳になると立候補することができないと定めている。選挙区からの出馬に年齢制限はないものの、比例との重複立候補は認められていない。
今年6月、この「議員定年」の撤廃をめぐって世代間抗争が展開された。
衛藤征士郎・元衆院副議長(79)と平沢勝栄氏(75、現復興相)を先頭に長老組有志が「政府が人生100年時代を唱える中で年齢により“差別”を行なうのはおかしい」と二階幹事長に定年制撤廃を直訴。二階氏は待ってましたとばかりに「不退転の決意で(定年制廃止を)やる」と応じたのがきっかけだ。
この動きに党青年局の若手議員たちが猛反発し、若手の地方議員の意見をまとめて執行部に「定年制の維持」を申し入れた。
定年撤廃問題は6月の自民党総務会で結論を出す予定が組まれ、長老組と青年局が互いに署名活動を展開したが、「コロナ対策を優先する」という名目で土壇場で対決は回避された。