8月に高松市で幼い姉妹2人が乗用車内に長時間置き去りにされて死亡した事件。保護責任者遺棄致死罪で起訴された母親は、以前にも複数回にわたって子どもを車内に残し、繁華街で飲酒していたと供述しているという。こうした痛ましい事件が度々報道されても後を絶たない「車中放置事件」。子どもの命を救うにはどうしたらいいのか。作家の内藤みか氏がレポートする。
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毎年、夏になると子どもが車中に置き去りにされ、熱中症で亡くなってしまう事件が起きてしまいます。こうした事件が繰り返し報道されても、子どもの命を粗末にする親が後を絶ちません。
子どもを車に閉じ込める親の“言い訳”
今夏、高松で起きた姉妹熱中死事件も衝撃でした。20代の母親は自分が飲み歩きたいがために2人の女の子を乗せた車を真夏の深夜の駐車場に放置したのです。朝方までに戻るのなら大丈夫だと、母親もそう思っていたそうなのですが、飲んだ後に知人男性の家に寄り、昼まで放置し続けて、最悪の事態を招いてしまったのです。
車を持っている人にとって、車内は部屋のようなプライベート空間という感覚があります。
車に子どもを残す親に「子どもは寝ていたので、起こして買い物に同行させたらかわいそうだと思った」「うちの子はおとなしいし、大丈夫だと思った」などと言う人が多いのも、家で留守番させるのと近い気持ちがあるからではないでしょうか。車内放置が危険な行為だということに気づいていない人は、大勢いるのかもしれません。
2018年にJAFが発表したデータでも、子どもを車中に残したまま保護者がクルマを離れ、「キー閉じ込み」の救援要請が8月の1か月間だけで全国200件以上もあったそうです。
置き去りにされた子どもの気持ち
私自身も、5歳の時に親に車中放置されたことがあります。といっても父親が知人宅に挨拶に行っている間、1時間ほどの出来事でしたが、かなりの心細さを味わいました。私の場合、車は路上に停められていたので、通りがかりの知らないおじさんに中を覗き込まれた時にゾッとしたのをよく覚えています。
もしあの日が夏で、車の中に強い日差しが入ってきていたら、さらに辛かったでしょう。そして車の中には暇をつぶせるものは何もなく、ただただシーンとした車の中で時が過ぎるのを待つばかり。
途中で耐えきれなくなり、父が戻ってきた頃には私はワアワア泣いていました。そんな私に父は詫びることなく「なんだちょっと待ってるだけで泣いたりして」と叱っただけで、自分がひどいことをしているという意識はまったくなかったのです。