高い演技力と将来性を買われ、2021年度前期のNHK連続テレビ小説『おかえりモネ』のヒロインに抜擢された女優の清原果耶(18才)。そんな彼女の初主演映画『宇宙でいちばんあかるい屋根』が9月4日封切られ、SNSを中心に「放つもの全てに魅了される」「将来大女優になるだろう」「初主演映画として伝説になる」と言った称賛の声が続々と寄せられている。映画や演劇などに詳しいライターの折田侑駿さんが解説する。
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映画の公開前からも、清原果耶の初主演映画とあって期待を集めていた本作。映画レビューサイト「映画.com」のアクセスランキングでは初週トップテン入りを果たし、「Yahoo!映画」や「Filmarks」などの他のレビューサイトでも、いずれも高評価を獲得している。ただ、興行収入ランキングのトップ10には入っておらず、残念ながら“大ヒット”しているわけではないようだ。小幅なスタートを切った本作だが、それでも本作を見逃してはならない理由がある。
その理由の一つに、この映画の“座組”の素晴らしさがある。本作の原作となったのは、多くの読者を魅了する人気作家・野中ともその同名小説。14才という多感な時期にある少女・つばめ(清原)が、“星ばあ”という謎の老婆と出会い、つばめが思いを寄せる人や元カレ、両親など、周囲の人々との交流のなかで、少しずつ大人への道を歩き出す物語だ。それらの人物を、桃井かおり(69才)や吉岡秀隆(50才)、坂井真紀(50才)、伊藤健太郎(23才)などのベテランから若手までの実力者が演じ、清原を脇で支えている。
メガホンを取ったのは、映画『新聞記者』(2019年)が第43回日本アカデミー賞最優秀作品賞を受賞した藤井道人監督。清原と藤井監督のタッグは、『デイアンドナイト』(2019年)に続いて2度目。将来を嘱望される女優と、いま最も期待される監督のコンビは、映画ファンにとっては垂涎ものだ。しかも、本作の主題歌の作詞・作曲・プロデュースは、シンガーソングライターのCocco(43才)が担当。劇中では清原が伸びやかに歌い、その透明感のある歌声で多くの観客を魅了した。
そして強く主張したいのが、やはり清原の主役としての圧倒的な存在感だ。この物語はつばめの成長譚であり、演じる清原は常に映画の中心。思春期の14才の少女のくるくると変わる表情や一挙一動は観客を飽きさせず、いつまでも観ていたいと思わせる魅力がある。清原自身は今年の春に高校を卒業し、これまで以上に俳優業を本格化させていくというところ。本作を撮った時はまだ学生だったはずだが、一人の少女の人生の過渡期を丁寧に表現した本作は、実際に人生の岐路に立つ清原とも重なり、今の清原だからこそのハマり役だったと言える。