国内

菅政権 携帯料金値下げの先にある「強権的国家」の可能性

菅内閣は、安倍内閣を継承する「居抜き内閣」とも(写真/GettyImages)

 2019年4月1日、当時の菅義偉官房長官(71才)は、首相官邸で新しい元号を発表した。あれから1年半、「令和おじさん」は国のトップに立った──。

 安倍晋三前首相の突然の退任表明を受けて行われた自民党総裁選で、岸田文雄前政調会長と石破茂元幹事長を大差で退け、9月16日に晴れて第99代内閣総理大臣に就任し菅義偉氏。目玉政策であるかのように打ち出しているものの中には、数々の問題点が見え隠れする。『総理の影 菅義偉の正体』(小学館)の著者でジャーナリストの森功さんはこう言う。

「菅首相は『デジタル庁の創設』や『行政の縦割り打破』、『規制改革』を掲げています。いずれも謳い文句としては上々ですが、実際に何をやりたいかが見えてこない。

 コロナの給付金が遅れたのはマイナンバーが普及していなかったからだといいますが、それなら、マイナンバーを銀行口座とひもづけて普及させる法律をつくればいいだけ。河野太郎行革相の『縦割り110番』が話題ですが、あれも昔からある陳情システムをキャッチーにしただけで、“自分たちだけでは何をやるべきかわからないから110番で募集しているのではないか”とも勘ぐれる。

 縦割りや規制にはそれなりの意味があるのでむやみに壊すべきではないし、加計学園問題のように、規制改革が特定の関係者の利益につながるリスクもある」

 こうした“国民ウケする”政策のせいで、いま以上に「弱者に優しくない社会」が訪れる可能性は高い。菅首相の「天敵」とさえ呼ばれる東京新聞記者の望月衣塑子さんはこう指摘する。

「菅さんは中小企業や地銀の再編を掲げていますが、それらが弱体化しているいま、強引に再編を進めれば、下位3割の中小企業が切り捨てられるともいわれています。しかも、菅さんが週1度は一緒に食事をするほど心酔しているといわれる竹中平蔵さんは、最近、“年金をやめて生活保護費を大幅に下げ、全国民に一律7万円支給しろ”と言い出しました。もし菅さんがこれに従ってしまったら、低所得者の負担は増すばかりです。

 少子化対策として新婚世帯に60万円給付や不妊治療の保険適用検討を打ち出しているものの、LGBTQなどのジェンダー格差を埋めることに関心があるわけではまったくなく、“労働力”としての子供を求めているところが薄っぺらい。菅さんの政策は、“本当の弱者”に対する優しさがありません」(望月さん)

 富国強兵の時代のごとく「産めよ増やせよ」では、多様化が進むいまの時代にそぐわない。中途半端なお金をバラまくよりも、非正規雇用をなくして賃金を上げる方が有効ではないか。

 このままでは、国民の多くが、自分たちが支持した首相にあっさり裏切られる可能性もある。

 経済評論家の浜矩子さんは、「そもそも私たちの生活にどう影響するかを考えるのがムダ」と断じる。つまり、それほど菅首相の掲げる政策は、国民の実生活にそぐうものではないというのだ。

「菅さんが縦割り行政の打破や規制改革をするのは、強いものがより強くなる社会をつくりたいからです。そのためのイメージ戦略に過ぎません。携帯電話の料金が4割下がる代償として、菅さんの思い通りに動く強権的な国家に引きずり込まれるかもしれない。かわいらしい令和おじさんの顔をして、パンケーキをもぐもぐする裏には怖い顔が隠れていると思った方がいい」(浜さん)

関連記事

トピックス

4月14日夜、さいたま市桜区のマンションで女子高校生の手柄玲奈さん(15)が刺殺された
「血だらけで逃げようとしたのか…」手柄玲奈さん(15)刺殺現場に残っていた“1キロ以上続く血痕”と住民が聞いた「この辺りで聞いたことのない声」【さいたま市・女子高生刺殺】
NEWSポストセブン
ファンから心配の声が相次ぐジャスティン・ビーバー(dpa/時事通信フォト)
《ハイ状態では…?》ジャスティン・ビーバー(31)が投稿した家を燃やすアニメ動画で騒然、激変ビジュアルや相次ぐ“奇行”に心配する声続出
NEWSポストセブン
NHK朝の連続テレビ小説「あんぱん」で初の朝ドラ出演を果たしたソニン(時事通信フォト)
《朝ドラ初出演のソニン(42)》「毎日涙と鼻血が…」裸エプロンCDジャケットと陵辱される女子高生役を経て再ブレイクを果たした“並々ならぬプロ意識”と“ハチキン根性”
NEWSポストセブン
山口組も大谷のプレーに関心を寄せているようだ(司組長の写真は時事通信)
〈山口組が大谷翔平を「日本人の誇り」と称賛〉機関紙で見せた司忍組長の「銀色着物姿」 83歳のお祝いに届いた大量の胡蝶蘭
NEWSポストセブン
20年ぶりの万博で”桜”のリンクコーデを披露された天皇皇后両陛下(2025年4月、大阪府・大阪市。撮影/JMPA) 
皇后雅子さまが大阪・関西万博の開幕日にご登場 20年ぶりの万博で見せられた晴れやかな笑顔と”桜”のリンクコーデ
NEWSポストセブン
朝ドラ『あんぱん』に出演中の竹野内豊
【朝ドラ『あんぱん』でも好演】時代に合わせてアップデートする竹野内豊、癒しと信頼を感じさせ、好感度も信頼度もバツグン
女性セブン
中居正広氏の兄が複雑な胸の内を明かした
《実兄が夜空の下で独白》騒動後に中居正広氏が送った“2言だけのメール文面”と、性暴力が認定された弟への“揺るぎない信頼”「趣味が合うんだよね、ヤンキーに憧れた世代だから」
NEWSポストセブン
高校時代の広末涼子。歌手デビューした年に紅白出場(1997年撮影)
《事故直前にヒロスエでーす》広末涼子さんに見られた“奇行”にフィフィが感じる「当時の“芸能界”という異常な環境」「世間から要請されたプレッシャー」
NEWSポストセブン
天皇皇后両陛下は秋篠宮ご夫妻とともに会場内を視察された(2025年4月、大阪府・大阪市。撮影/JMPA) 
《藤原紀香が出迎え》皇后雅子さま、大阪・関西万博をご視察 “アクティブ”イメージのブルーグレーのパンツススーツ姿 
NEWSポストセブン
2024年末に第一子妊娠を発表した真美子さんと大谷
《大谷翔平の遠征中に…》目撃された真美子さん「ゆったり服」「愛犬とポルシェでお出かけ」近況 有力視される産院の「超豪華サービス」
NEWSポストセブン
中居正広氏の兄が複雑な胸の内を明かした
【独自】「弟がやったことだと思えない…」中居正広氏“最愛の実兄”が独白30分 中居氏が語っていた「僕はもう一回、2人の兄と両親の家族5人で住んでみたい」
NEWSポストセブン
『傷だらけの天使』出演当時を振り返る水谷豊
【放送から50年】水谷豊が語る『傷だらけの天使』 リーゼントにこだわった理由と独特の口調「アニキ~」の原点
週刊ポスト