与党が「選挙をやれば圧勝だ」と解散風を煽るのは、菅政権の高支持率によるものだけでない。再スタートした野党第一党・立憲民主党への期待感が、あまりにも低いのだ。そんな立憲民主に、当選17回の小沢一郎氏と当選14回の中村喜四郎氏という保守系の長老たちが加わった。この2人が、“ダメダメな野党”を変えることができるのだろうか。
選挙に弱い野党議員に共通するのは、当選した途端に、「オレは国会議員だ」と胸を反り返らせ、国会で目立つことや政策論議は大好きだが、手間暇かかる地元活動を嫌がる傾向が強いことだ。その結果、有権者が政治に何を求めているかをくみ取れずに消え去っていく。
その一方で、田中角栄元首相に選挙術を叩き込まれた小沢氏と喜四郎氏には、「選挙に滅法強い」という共通点がある。
特に、実刑の過去を持ち、その後も無所属で地元への“利益誘導”ができない喜四郎氏が生き残ったのはこの地元活動を徹底して続けてきたからだ。
自分で選挙区(茨城7区)を1軒ずつ訪ねてつくりあげた後援会員は7万人と言われ、現在も、毎週土曜と日曜の2日間、街宣車で選挙区を回りながらマイクを握って有権者に生の声を届ける。
自民党議員の後援会の多くが地元の有力企業の経営者などが務める連合後援会長の下に、地域ごと、企業・団体ごとの後援会が置かれて“上意下達”のピラミッド型の組織となっている。
それに対し、喜四郎氏の後援会は町内ごとに数百に分かれ、横のつながりも連合後援会もない。利害で結びついた企業中心のピラミッド型後援会は時の与党に引き抜かれやすいが、本人と有権者が1対1で結びついているから逆風でも支持してくれる。
ジャーナリストの常井健一氏は選挙の強さの秘密をルポルタージュした著書『無敗の男 中村喜四郎全告白』の中で、活動ぶりをこう書いている。
〈まるで、天台宗の僧侶が真言を唱えながら千日間も山中を歩き続ける「千日回峰行」のような過酷な活動である〉
弱小野党の“練習嫌い”の議員たちを、これから鬼コーチとなった喜四郎氏が、荒行のように過酷な地元活動の特訓で締め上げるのだろうか。
※週刊ポスト2020年10月16・23日号