日本人横綱誕生への期待が高まっている。9月30日の番付編成会議と臨時理事会において、秋場所で初優勝した関脇・正代の大関昇進が満場一致で決まった。
「立ち合いで変化しない正攻法でファンも多い。昇進の目安となる3場所33勝に1勝足りず、“もう1場所様子を見るべき”との意見もあったが、協会ナンバー2の尾車親方(元大関・琴風)と、ナンバー3で同じ時津風一門の鏡山親方(元関脇・多賀竜)が強く推した」(担当記者)
場所後の横綱審議委員会では、全休した白鵬と鶴竜へ厳しい意見が出たこともあり、「貴景勝、朝乃山の両大関とともにモンゴル横綱に代わる日本人横綱の誕生が期待される」(同前)わけだ。
問題は「正代が白鵬、鶴竜に勝てるのか」である。優勝した秋場所は両横綱が全休。11勝をあげた7月場所も白鵬には不戦勝で、途中休場の鶴竜とは対戦がなかった。「正代に苦手意識があるのではないか」(若手親方)と心配する声も根強い。
「白鵬との対戦成績は3勝(不戦勝1)9敗。対鶴竜に至っては0勝13敗です。白鵬とは2016年5月場所の初顔合わせの時に張り手1発で重心を失い、そのまま敗れた。赤く腫れ上がった正代の左頬が強烈に印象に残っている。同じ時津風一門の鶴竜は、井筒部屋時代に稽古相手がいなかったため、近所の時津風部屋へ毎日のように出稽古に来ては、正代を土俵に引っ張り上げていた。手の内は知り尽くされ、痛めつけられてきた」(同前)
もともと正代は“ネガティブ発言”を連発するキャラクターで、白鵬に敗れた後に支度部屋で「ただただ、ビビっていた」と漏らしたことも。
「そういうキャラが愛されてきたわけだが、これからは角界の未来を背負う存在となる。敢然と向かっていってほしい」(前出・若手親方)
“天敵”の2横綱を打ち破らない限り、綱取りへの道は開けない。
※週刊ポスト2020年10月16・23日号