例年であれば、多くの企業が6月末までに提出する「有価証券報告書」だが、今年はコロナ禍で遅れ、昨年度分のデータがここにきてようやく出揃った。開示された1億円以上の役員報酬を得ている面々を見ていくと、意外な「同業社長の年収格差」が浮かび上がってきた。この違いは、各業界の最新動向が投影されたものといえるのだ──。
総合商社
業績の面でも、前期決算の最終純利益では三菱商事が5354億円、伊藤忠が5013億円と激しい首位争いを繰り広げている。
経営トップの年収レースはすでに“首位交代”となり、三菱商事の垣内威彦社長が5億3100万円であるのに対し、伊藤忠の岡藤会長が6億3200万円とそれを上回る。『経済界』編集局長の関慎夫氏は、「伊藤忠を“戦う集団”に変えた岡藤会長の功績への評価といえるでしょう」と話す。
興味深いのは、役員報酬全体として見ても岡藤氏に引っ張られるように、伊藤忠が三菱商事を凌駕していることだ。
伊藤忠では代表権を持つ2人の副社長が3億円以上、2人の専務執行役員が2億円以上。それに対し三菱商事では代表権を持つ常務執行役員の報酬はいずれも1億円台にとどまる。こうした「同業社長の年収格差」について、前出・関氏はこういう。
「役員報酬は基本的に前期の業績と連動するものですが、社風など複合的な要因がある。NTTドコモのような“親方日の丸”が根っこの企業はトップの報酬も抑制的で、ソフトバンクのような一代で築いた企業とは対照的になる。総合商社はトップ2の業績が逼迫しているが、この数年の勢いの違いで報酬に差が出た」
来年以降の「コロナ後の社長年収格差」はどう変わっていくのだろうか。
●データ協力/東京商工リサーチ
【図内、調査対象期間は2019年度(2019年4月期〜2020年3月期)とし、代表権をもつ取締役・執行役のうち最も役員報酬が高い者を記した。()内は前年度の役員報酬】
※週刊ポスト2020年10月16・23日号