11月1日の大阪都構想の住民投票期日まで1か月を切った。大阪市の松井一郎・市長は「負けたら政治家としては終了」と政界引退を覚悟して臨んでいるが、275万人の大阪市民にとってはわずらわしいことも少なくない。
大阪都構想では、大阪市を廃止して、現在の24区を4つの特別区「淀川区」「北区」「中央区」「天王寺区」に再編するが、それに伴い免許証や保険証、名刺などの住所を書き換える必要も生じる。その手間や費用負担を心配する声は多い。松井市長直轄で都構想を担当する市副首都推進局の説明。
「免許証や保険証などは手続き不要です。ただし個人の名刺や飲食店の看板などは市民のご負担となります」
「大阪市消滅」に伴う混乱もありそうだ。大阪市が試算した特別区設置のコストは241億円(庁舎管理などのランニングコストは別途30億円)。このうち、電柱などの「街区表示変更」だけで13億円もかかるという。
特別区設置は、住民投票で可決された後の2025年1月1日。副首都推進局は、「道に迷うのであまり早く電柱の表示を貼り替えるわけにもいかない。このままでは大晦日に職員総出で貼り替えることになるのか、今後の検討課題です」と説明するが、府民からは「知らんがな」とツッコミが飛んできそうだ。
街区表示だけでなく、「大阪市」「浪速区」などと表記されたマンホールも表示を変えるのか?
「市内にはマンホールが約18万個もあるんです。1個の相場は6万円。今のところ、マンホールをどうするかは未定ですが、現実的に考えるとそのままだと思います」(市建設局)
130年の歴史を誇る「大阪市」の名前は、特別区再編で消えても、足元で生き残ることになりそうだ。
●取材/竹村元一郎(ジャーナリスト)
※週刊ポスト2020年10月16・23日号