有名芸能人の自殺とみられる死が相次ぐ中、ショッキングなデータが明らかになった。8月の自殺者数が1854人(警察庁公表データ)となり、昨年同期に比べ251人増加したのだ。7月も1818人で、2か月連続で前年同月を上回った。特に若い世代の自殺が増えているが、コロナ禍の今、若者たちを取り巻く環境はどう変わったのか。ジャーナリストの山田稔氏がレポートする。
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今年に入ってからの自殺者数をみると、2月から6月までは前年を下回っていた。上半期の自殺者総数は9497人で、昨年の1万462人に比べ965人減少していた(9.2%減)。4月から5月にかけては緊急事態宣言が出され、日本中がコロナ禍に怯えていた時期である。にもかかわらず、この2か月間の自殺者数は3062人で前年同期に比べ605人、約17%の大幅な減少となった。
これについては「コロナとの闘いということで一体感が出たことで自殺を思いとどまった人が多いのではないか」「自粛生活で職場や学校のストレスから解放されたからではないか」など、さまざまな解説がなされている。
そんな流れが変わりつつある。7月以降、自殺者が前年同月を上回る事態になっているのだ。
20代の若者たちの自殺が急増している
まずは、8月の自殺の概況をみてみよう。自殺者のデータには2種類ある。通常、メディアで報じられているのは警察庁が発表する自殺者データで、これは発見日と発見地をベースにしたものだ。
この警察庁のデータを基に厚労省が自殺日と住居地を計上したデータもまとめ、公表している。ここでは厚労省データを基に見ていきたい。自殺日・住居地のデータでは8月の総数は1783人で、前年同月比325人増。
【都道府県別(自殺日・住居地ベース=厚労省集計)】
自殺日、発見地のデータでは東京都が210人で最多だが、自殺日・住居地で見るともっとも多いのは愛知県だ。上位は次の通り。
(1)愛知県121人(2)神奈川県109人(3)大阪府103人(4)千葉県100人(5)埼玉県96人 ※不明186人
大都市圏が上位を占めているが、東京都は39人と少ない。発見地ベースとの大きな差は、上京後に住民票を移していない人がいるうえ、他県から東京に来て自殺した人が多いからだろうか。