かつて800万部の部数を誇っていた朝日新聞だが、日本ABC協会によると、2020年8月の販売部数は499万1642部にまで減っているという。だが、朝日はまだ影響力があると感じている人は多い。
今年8~9月にかけて同紙から4回の取材を受けたというネットニュース編集者の中川淳一郎氏(47歳)は、「他の新聞に掲載された時と、ネットの反応も知り合いからの反応もまったく違う」と語る。
「何しろ、何年も会っていない人から突然『朝日新聞で見たよ』とメールが来たりするんですよ。私は別の新聞で連載を持っていたりもするのですが、読者がネットにその連載について書きこんでくれることはあるものの、私に対して直接連絡してくれる人は皆無です。だけど、朝日になると突然連絡が来る」(中川氏)
朝日新聞については従軍慰安婦の件での誤報を認めたことから部数低下が進んだといった分析もある。コアなファン層が離れたという見方もあるが、ネットだけで購読している層もあるわけで安易に判断はできないかもしれない。影響力はまだまだあるのではないか。それについて実感しているのが、10月7日、同紙の「オピニオン&フォーラム」欄にインタビュー記事で登場した「オバ記者」ことライターの野原広子氏(63歳)だ。
この日は見開きで「学歴なんて関係ない?」というテーマで社説2つに加え、読者の意見、そして識者3名の取材記事が掲載された。野原氏はこの中の1人である。同氏は茨城県の農業高校出身だが、ひょんなことから「早稲田大学卒業」になり、後に「早稲田大学中退」ということになってしまった。本人はそうした「学歴詐称」をする意図はなかったのだが、学歴を過度に重視する知り合いが勝手に思い込み、そのようにさせられてしまったのだという。
「学歴詐称」により2年ほどの「針のむしろ」生活を送った経験がある野原氏は、今回朝日新聞の影響力をどう見たか。同氏はこう語る。
「私が朝日に掲載された時、すぐに飛んできたのが東大卒の方ね。学歴の高い人ほど反応が速い。これはもう見事。そして『なんだかんだ言っても学歴重視の朝日新聞に、ガツンと言ってやったんだね。痛快』と意外なことを言ったのは早稲田大学卒。いやいや、そんな大それた意味はなかったんだけどなぁ。そして、私と同じ、学歴に遠い人の反応は『あぁ、新聞ね』といった感じ。あまりピンと来てないみたいで、その落差の激しさに驚いた。
今回、自分が取材を受けて出たことで、誰がこの新聞を読んでいるのかもわかった。30歳ぐらいの親戚が『録画するね!』と言ってたけど『違うよ、朝日は新聞だから録画できないよ』って言ったの。もしかしたらテレビ”朝日”と勘違いしたのかもしれないね。それだけ30歳ぐらいの人からすると新聞って縁遠いんだね。とはいっても、今回連絡してくれた人を見ると、マスコミ系の人って新聞を意外と読んでいるんだね」