世界各国の海域における、中国の大規模な遠洋漁業船団による違法操業が国際問題化している。米沿岸警備隊の最高責任者であるカール・シュルツ長官は9月下旬、米ワシントンDCで行われた漁業問題に関する国際的なシンポジウムで、中国は最悪な違法操業国であると名指しで批判したうえで、米沿岸警備隊は中国の脅威を取り除く用意があると事実上の中国船取り締まり宣言を行っていたことが分かった。政府系報道機関「ラジオ・フリー・アジア(RFA)」が報じた。
シュルツ氏はシンポジウムで、違法操業は世界の海上安全保障における最も重要な優先事項として、麻薬対策と海賊対策の上位に来ている位置づけ。安定した資源を保護するホスト国を脅かす行為であり、国際的な食糧安全保障の大きな脅威となっていると指摘した。
具体的な違法操業の例としては、エクアドル近海のガラパゴス海洋保護区で最近、米国の沿岸警備隊の南部司令部の艦船が違法操業をしている数百隻の中国漁船団を発見、エクアドル当局と拿捕を行ったケースを挙げた。漁船団は中国で貴重な食材であるフカヒレのために何千匹ものサメを捕獲していたほか、大量のイカ漁を行っていたという。
このほか、中国近海の例としては、北朝鮮沖における違法なイカ漁が、あまりの乱獲で、イカが絶滅してしまう可能性が指摘されている。また、ベトナム沖で、多くの中国漁船が操業したことで、ベトナム海軍が出動したケースも報告されている。
中国政府は中国の遠洋漁業団は約2600隻としているが、実際は1万7000隻にものぼる可能性がある。対してアメリカの遠洋漁船は300隻に満たないという。
シュルツ氏は「これは本当に主権国家の権利を著しく侵す違反であり、主権、経済安全保障、世界的なルールに基づく秩序を弱体化させる重大な行為である。そのなかでも、中国は最悪の違法操業国であり、わが米沿岸警備隊は(中国の)脅威を取り除くために、最大限の努力をする用意がある」と強調している。