大阪維新の会が推し進める大阪都構想。大阪市を廃止し、現在の24区から4つの特別区「淀川区」「北区」「中央区」「天王寺区」への再編を目指し、11月1日にはその是非を問う住民投票が実施される。
しかし、大阪都構想が実現したとしても、様々な問題が生じる可能性がある。大阪市職員の職場が大きく混乱するかもしれないのだ。
各特別区の公務員は、基本的に現在も使われている区役所を本庁舎とすることになる。ただ、新・淀川区と新・天王寺区は、現在の淀川区役所と天王寺区役所を本庁舎とするが、職員数の増加に伴って不足するスペースを補うため、職員の一部は新・北区の庁舎になる大阪市役所(中之島庁舎)で働くことになるのだ。
都構想反対派の自民・川嶋広稔市議が指摘する。
「もともとは新庁舎を建設するはずでしたが、賛成に回った公明党がコスト削減を要求したことにより、新・北区の中之島庁舎に、新・淀川区、新・天王寺区の職員が通勤する“雑居ビル”にすることになったんです」
自民党が府・市の資料を基に試算したところ、天王寺区610人、淀川区900人の計1510人が間借りで勤務することになるという。ある市職員はこう漏らす。
「自治体の庁舎が別の自治体にある例は、離島くらいだそうです。松井市長は『それぞれの特別区職員が同じ場所で働けば、情報共有がスムーズ』とか言っていますが、だったら大阪市のままでええやんとしか……」
有識者からは「住民にも影響がある」という指摘も出ている。行政に詳しい高寄昇三・甲南大学名誉教授がいう。
「大規模な地震などが発生した場合、特別区ごとに災害対策本部が置かれることになる。しかし、区域外に職員がいる状態で、危機管理の体制を迅速に敷けるかは疑問視されている」
●取材/竹村元一郎(ジャーナリスト)
※週刊ポスト2020年10月16・23日号