『サザエさん』や『いじわるばあさん』といった名作漫画を生み出した長谷川町子さん(享年72)は、2020年1月で生誕100周年を迎えた。新型コロナウイルスの影響による開館延期を経て、7月11日には東京世田谷に長谷川町子記念館がオープンした。
サザエさん、いじわるばあさん、そして長谷川町子さんの銅像が入り口でお出迎えしてくれる長谷川町子記念館。長谷川町子美術館3代目館長で町子さんの作品を出版していた「姉妹社」の社員として半世紀近く彼女を支えた川口淳二さんはこう語る。
「密を避けるために、整理券を配って入館者制限をしていることもありますが、土日は2時間待ちになることもあります。町子先生の豊富な資料があり、なかには4時間滞在なさってじっくり読み込むかたも」(川口さん・以下同)
1階には、『サザエさん』に描かれている磯野家の食卓を再現した、昭和20年代の懐かしい茶の間や、バーチャルな落書きを楽しめる板塀などがあり、童心に帰りながらサザエさんの世界観に浸ることができる。
「1985年には、町子先生が集めた美術品を展示するために長谷川町子美術館を設立しました。ところが、町子先生が描いた漫画に関連した展示を目的に来館されるかたが多く、よく“サザエさんが全然ない”と怒られては、頭を下げたものです」
そこで町子さん生誕100年の節目に、町子さんの作品や原画資料などをメインに展示する長谷川町子記念館が、美術館の正面に新設された。
「町子先生には“川口くん、こんなもの作らなくてよかったのに。いらないわよ”と叱られてしまうかもしれませんが(笑い)」
川口さんが、記念館でぜひ見てほしいと語るのは、『サザエさん』以外の漫画の魅力。そして、その漫画からにじみ出る町子さんの人柄や才能だ。
「町子先生の仕事は、“漫画家”にとどまりません。表紙のデザインから製本まで、広く携わりました。独特の色彩感覚やレイアウトセンスなど芸術家として多くの才能があることがわかるはずです」
大人をノスタルジーに誘い、子供には新鮮に感じるだろう町子ワールドを楽しんでみてはいかがだろうか。
※女性セブン2020年10月22日号