頭痛や腰痛、腹痛など体の痛みであれば、つらさゆえに原因を探したり、病院へ行ったりする。しかしそれが「かゆみ」に変われば塗り薬を塗るだけ、またはぽりぽりとかいてそのまま放っておいてしまう人も多いだろう。だがその裏には、深刻な病気や不調が隠れている可能性がある。
たとえば、腎臓が悪いときにもかゆみを感じることがある。きくち総合診療クリニック理事長の菊池大和さんはこう言う。
「腎臓は血液をろ過して老廃物を取り除き、尿を作る器官です。腎臓の働きが弱まると、ビリルビンをはじめとした血液中の不純物の濃度が上がり、かゆみが生じることがあります」
実際に亀谷診療所院長で総合診療医の亀谷学さんは、臨床の現場でかゆみを訴える患者をよく見ている。
「健康な人は腎臓の働きによって老廃物を排出していますが、腎臓が悪くなると老廃物が血液中や皮膚にたまり、皮膚のかゆみを感知する部位が刺激されて強いかゆみが起きます。腎臓が悪くなると皮膚の乾燥も加わるため、皮膚の保湿剤を使用したり、お風呂で皮膚をこすりすぎないように指導しています」(亀谷さん)
甲状腺機能低下による乾燥
甲状腺機能の低下がかゆみを引き起こすこともある。あいこ皮フ科クリニック院長の柴亜伊子さんはこう話す。
「体全体の新陳代謝を促し、脳や胃腸を活性化させて体温の調節をする甲状腺ホルモンが作られなくなるので、体のさまざまな機能が低下します。それに伴い、肌の乾燥、胃腸の不調、うつ症状などが引き起こされる。甲状腺機能の低下による乾燥の場合は、保湿剤を塗っても効きません。根本的な治療が必要になります」