大阪市を廃止して、現在の24区を4つの特別区「淀川区」「北区」「中央区」「天王寺区」に再編する大阪都構想。11月1日の住民投票まで、残り時間も少ないなか、大阪市の教職員の間に不安が広がっているようだ。
大阪維新の会など賛成派は、「人口約270万人の大阪市教育委員会よりも各特別区に設置される区教委のほうがいじめなどに素早く対応できる。一律の教育行政ではなく、特別区ごとに英語教育などに力を入れた学校づくりができる」と都構想の効果をアピールする。しかし、現場の教師からは別の見方もある。
「財政力が豊かで富裕層の多い区と、庶民の多い区では、はっきり言って学力も生徒の質も変わってくる。これから教師を目指す人は教育環境の良い区の採用試験を受けるようになり、特別区ごとに格差が広がりかねないと懸念しています」(40代中学教諭)
そうした状況は「大学生の公務員採用試験にすでに現われている」と指摘するのは、行政に詳しい高寄昇三・甲南大学名誉教授だ。
「大阪市を避けて京都や兵庫の自治体の採用を希望する学生も少なくないと聞きます。都市計画など広域的な仕事は大阪府に移管されて権限を奪われてしまい、残るのは民生・教育・衛生などの業務ばかり。総合的な行政を奪われてしまえば公務員のモチベーションを維持するのはしんどいことなんです」
松井一郎市長直轄で都構想を“推進”する副首都推進局は同じ仲間の声をどう聞いているのか。
●取材/竹村元一郎(ジャーナリスト)
※週刊ポスト2020年10月16・23日号