11月1日にその是非を問う住民投票が実施される大阪都構想。大阪市を廃止して、現在の24区を4つの特別区「淀川区」「北区」「中央区」「天王寺区」に再編するものだが、同時に「大学再編」も行なわれる。
大阪市内にある「大阪市立大学」(現住吉区)と、「大阪府立大学」(堺市)が統合され、名称は「大阪公立大学」になる。吉村洋文。大阪府知事は「日本一の公立大学を目指してほしい」と期待を寄せ、2025年4月には現大阪市城東区に「森之宮新キャンパス」を開校する予定だ。
ところが、この新大学に思わぬところから“物言い”がついた。「阪大」の通称で知られる難関国立大の大阪大学(吹田市など)からだ。
発端は阪大の西尾章治郎学長が大学の公式サイトに大阪公立大学の「英語表記」について“抗議”を掲載したことだった。
大阪公立大学は、英語表記を「University of Osaka」とし、阪大の正式表記である「Osaka University」と区別したとするが、西尾学長はこれに反論。海外でも定着している阪大の名称と「酷似」し、〈世界に羽ばたく両大学の未来にとって大きな障害となる〉〈意見交換が行われないまま決定されたことは誠に残念〉とした。
8月21日には、同じ公式サイトで大阪公立大学が特許庁に申請した「University of Osaka」の商標登録を認めないよう求めた。
対する大阪公立大学は、世界大学ランキングで「開学10年で阪大の順位(200位)を上回る」と目標を掲げた。吉村府知事は「大阪公立大学がきちんと名称を決定して存在するようになれば混乱はないだろう」と話した。
両者一歩も引かない“2つの大阪大学”問題の火種はくすぶり続けているようだ。
●取材/竹村元一郎(ジャーナリスト)
※週刊ポスト2020年10月16・23日号