「お客さまは神様です」という言葉を笠に着て、わがままを通そうとするカン違い客がここ最近増えているという。そもそもこのフレーズは、歌手の故・三波春夫さんが信条にしていたもので、本来の意味は、神前で祈るときのように雑念を払い、澄み切った心にならなければ完璧な藝を披露できない、だからお客さまを神様とみて歌を歌うというもの。真意がねじ曲げられて広まったのだ。
商売をやっている者にとってクレーマーは悩みの種。どうやって乗りきればいいのか? ある飲食店のケースを紹介し、専門家にその対処法を聞いた。
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飲食店でパートをしているのですが、あるとき、女性客が「冷やし中華」と「チャーハン」をテイクアウトしていきました。翌朝、その女性客が怒りの形相で、
「昨日ここで買った冷やし中華をさっき食べたんだけど、麺はカチカチだし、チャーハンなんてベチャベチャ。返金しなさいよ!」
と駆け込んできました。時間が経って食べたらそうなるだろうと、理不尽さを感じたものの謝罪をし、「作りたてに交換いたしますので」と、商品を返してもらおうとしたところ、
「は? 全部食べたに決まってるでしょ。それでまずかったから来てやったんでしょうが。店長呼びなさいよ!」
その日は店長が不在。女性客の高圧的な態度に圧倒された私は結局、返品なしの返金に応じてしまいました。
後日、店長に経緯を伝えると、「大変だったね」と労ってくれた上で、入り口に貼り紙をしてくれました。
「ある女性客の言動でスタッフが精神的苦痛を受けました。今後、このかたを出入り禁止にします。入店された場合も注文は受けません」
と、その客を“出禁”に。スタッフを守ってくれた店長の対応に救われました。
●専門家の解説 「店も客を選べる行きすぎたクレームは強要罪になる場合も」
「“出禁”は最終手段なのであまりおすすめはしませんが、民法には『契約自由の原則』があり、店も客を選べます“「土下座しろ”といった要求は強要罪にあたるため、“お客さまが罪に問われる恐れがあるので控えさせていただきます”と断ってOK」(ネガポジ代表の益田麻実さん)
【プロフィール】
益田麻実さん/ネガポジ代表。大手旅行代理店の顧客相談室にて年間4万件ものクレームに対応。現在は、クレーム対応コンサルタント。
取材・文/村瀬真紀
※女性セブン2020年10月29日号