サービス業をしている人なら、避けて通れないのがクレーマー。「オレは客だぞ」と、まるで神のように振る舞うクレーマーもいるが、そもそもビジネスはお互いが対等の関係。店側もできること、できないことを明確にし、客の言うことを全面的に聞く必要はない。そこで、大手百貨店の受付でのケースを例にあげ、困った客への対処法を専門家に教えてもらった。
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毎週のように来店する、ある高齢男性に困っていました。「◯日の◯時に行くから」と来店予定を電話してきて、車いすを用意するようリクエストされるのです。男性は歩いて来店され、店で車いすに乗ります。足腰はしっかりしていて、普段は車いすを使っていないんです。
彼の目当ては、車いすを若い女性スタッフに押させ、店内を回ること。ほかの業務もあるので、1人が彼につきっきりで数時間対応するのが正直大変で……。しかも、買い物はされないんです。男性上司に相談したところ、
「次は私に任せて」
と言われました。後日、その男性客が来店し、いつものように車いすに乗るのを見計らい、「本日は私がご対応させていただきます」と、上司が笑顔で登場。いつもの女性はどうしたと怒る男性客に対して上司は終始穏やかに対応していました。
それからその男性は来なくなりました。若い女性と話がしたかっただけかもしれませんが、車いすは本当に必要なお客さまに使っていただきたいので、正直ほっとしています。
●専門家の解説 「強要された過剰なサービスは店の判断で断れる」
このケースは上司の機転で穏便に解決しましたが、本来、車いすを健常者に貸し、押して案内するのは不必要な過剰サービス。すべての客に同じ対応ができないサービスを続けるのは不誠実になるので、店の判断で断れます」(ネガポジ代表の益田麻実さん)
【プロフィール】
益田麻実さん/ネガポジ代表。大手旅行代理店の顧客相談室にて年間4万件ものクレームに対応。現在は、クレーム対応コンサルタント。
取材・文/村重真紀
※女性セブン2020年10月29日号