「コロナ禍の影響で、客が急に怒り出す、ストレス発散型クレームが増えています」とはクレーム・コンサルタントの谷厚志さん。クレームとは本来、客が被った不利益や損害に対する正当な要求だ。しかし昨今増えているクレーマーは、文句やわがままを言うこと自体が目的になっているのが特徴だ。
「私が担当しているクレーム件数だけでも、この10年で約10倍に増えています。増加の原因は価値観の多様化にあり、現代はまさに“ウィズクレーマー社会”といえます」(谷さん)
クレーマーをうまくあしらう方法はないものか? ドラッグストアで働くスタッフのケースを例に、その対処法を谷さんに聞いた。
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コロナ禍でマスクが品薄だったときは、心身ともに疲れ果てました。私たちですら入荷予定がわからない状態だったので、早朝から店に並んでマスクを要求するお客さまにも、「品切れで入荷は未定です」と、お断りするのもひと苦労。なかには、「そう言うあんたはマスクをしているじゃないか、それを売れよ!」と怒鳴り、店員に詰め寄る客もいました。暴言だけならまだしも、
「マスクが手に入るまで帰らない」
と店内に居座る客まで出る始末。そこでスタッフ一同、対策を考えました。開店前に行列しているお客さまに、
「本日マスクの入荷はありませんが、ハンカチで代用できるので、よかったら参考にしてください」
と、手作りマスクの作り方を図解したコピーを配ったのです。店員もハンカチで作ったマスクをつけて店に立ちました。これが効果てきめん。
「仕方ないわね。じゃあ私も作ってみようかしら」
と納得して帰ってくれました。「ないものはない」と、はっきり伝えることも大切だと実感した出来事でした。
専門家の解説「できること、できないことを明確にするのが大切」
日本クレーム対応協会代表理事の谷厚志が、対処法を教えてくれた。
「例え“おつりの渡し方が気に入らない”というのは、次もその店を利用したい気持ちが前提にあるクレームです。それに対して“ないものを売れ”とゴネるのは要求過大型の迷惑クレーム。それにどこまで対応するかの線引きが大事で、“これ以上対応できません”と毅然とした態度で応じることこそ、店側の基本姿勢です。このケースは、その上で代案を示した模範例ですね」
【プロフィール】谷厚志/日本クレーム対応協会代表理事。怒りを笑いに変えるクレーム・コンサルタントとして活動中。
取材・文/村瀬真紀
※女性セブン2020年10月29日号